03 ピラミッドの維持
階級社会は、正しくピラミッド型をしていなくては権力の維持が出来ない。
何十もの公爵家/王家の分家/が出来たり、爵位を持つ者が増えたりすると、実権が王家から離れたり、利益の細分化が起こって個々の生活が苦しくなったりする。
つまりは、無闇に爵位持ちの数を増やせないので、王家や貴族の家に生まれても、爵位や権力を持てない者が出てくるのだ。
日本の江戸時代の武士社会を貴族的に見ると、将軍家〔王家〕、御三家〔公爵家〕と見る事ができる。
この様に徳川幕府は、分家/公爵家/を三つまでで、増やす事なく維持していた。
その他の貴族として親藩、譜代、外様という3つの大名をあてれば、分かりやすいだろうか。
権力者世界において、後継者たる長子以外の者には、後に後継者の予備としての役目も不要になった次男以降の者など、それぞれの家で爵位や家名を継げなかった者がでてくる。
複数の者に権力を譲渡すると、御家騒動や影響力低下の原因になるので、権力の譲渡は後継者一人に限られるからだ。
彼ら、後継者から外れた者の未来は、分家や他家に婿養子として迎えられるか、教会や寺に送られて俗世から離れて一生を終えるか、軍事の責任者として最前線で命を落とすか、地位を捨てて被支配階級に落ちるかなど幾つかある。
最悪、後継者争いを避ける為に家族内で暗殺されたり、濡れ衣で投獄されて一生を終える。
本人たちが望もうと、望まなくとも、社会全体を守るために身内同士で殺し合う必要性もでてくるのが、『権力者』と言うものだ。
だが、後継者になったからと言って安心もできない。
以上の様に、盤面数が決まったリバーシの様な貴族社会で影響力を増すには、コマを裏返す必要がある。
敵対者を撲滅し、友好的な者や配下となる貴族の数を増やすのだ。
実際、国に対する優れた貢献度によって後継者以外の子弟が爵位を与えられ分家として独立したり、恩賞として平民に爵位が与えられたりして貴族の数が増える事もある。
この様な時には、既存の貴族を取り潰して新参者に宛がう事があるので、それを利用するのだ。
邪魔な貴族や、役に立たない貴族に難癖を付けて、取り潰した例には、多少の経緯は違うが『忠臣蔵』などが有名だ。
史的にも『忠臣蔵』以降、浅野家は大名から旗本へと格下げされ、以後の赤穂藩は永井家が藩主となっている。
貴族社会を『魔窟』などと表現する事も有るのは、挙げ足をとったり難癖をつけて爵位を取り上げ、代わりに自分の配下に爵位を受けさせて、国内での影響力を増そうとしている上位階級の貴族達が存在しているからだ。
当然、社交界では言質を取られる様な事は避けねばならず、聞いた話や噂話として話題を持ちかけ、周囲から情報収集をしながら保身をしなくてはならない。
領地内の情勢不安や跡目争いなども、統治能力がないとして粛清の対象となる。
まさに、狐と狸の化かし合いだ。
ただ、全ての貴族が、この様な腹芸が得意な訳ではない。
武勲によって地位を得た脳筋な辺境伯などは、国内での陣取り合戦よりも、国外に領土を広げて陣営を増やそうとする。
つまりは戦争だ。
国に勝機とメリットのある戦争なら王家も賛同するだろうが、多くの脳筋は、ヤル気と根性論でしか考えない為に、王家は、この様な者達を監視し、行動を規制しなくてはならない。
勝手に戦争を始めようとするならば、先の粛清の対象となり、国軍投入してからの爵位剥奪と投獄が待っている。