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通過電車が来るとビビる

痴漢に間違われた男を見ていたら、そいつがこっちの方に走って来た。逃げる姿に哀れだなと小馬鹿にしたような感想を抱き、電光掲示板を見ると通過電車が来るようだ。丁度アナウンスの声も響いている。

このままじゃ痴漢に押されて線路に落ちて、下手すりゃ死んでしまうと思った。残業疲れの残る体を動かして捕まえるか避けるかしようとしたら、酒を呑んで気が大きくなってただろうサラリーマンに先をこされた。痴漢の疑惑を掛けられた男はサラリーマンに組み敷かれた。

内心ホッと安堵のため息をつく。これ以上帰りが遅くなるのはゴメンだ。明日も仕事が待っている。

帰りを急ぐ心のせいか、ふと線路を見やり未だ電車が来ない事を確認して、誰かに押された。すぐ近くで人が混み合っていたからだろうか?線路に落っこちて、ホームを見ようとしたらプァンと電車が来る合図とゴトゴトという音が聞こえる。冷や汗がながれる。ホームを振り返ると半分は俺を見て、残りは電車を見ていた。急げば間に合うはずだ。駅に着いたら電車は速度を落とすはずだし。



あ、通過電車だったっけ。



間抜けな思考の中に俺の意思はくらくなった。






走馬灯というモノはいつ見るモノだったろうか?

今、俺は俺の過去を見ている。幼稚園入園から小学校卒業まで、成績も運動も普通だった。未来の俺から見ても普通だった。得意不得意、得手不得手、そんなのは何ら無く平らで凡そ(おおよ)つまりは平凡。

そんな俺に両親はイチバンになる喜びを知ってもらおうと様々な習い事をやらせてくれた。当時の俺にとっては迷惑甚だしかったが、今思い返せば十二分に愛されていたのだろう。しかし結果は器用貧乏となっただけだった。

中学生になる頃には普通と平凡を通り越して地味となってしまったが、器用貧乏のお陰か友達からは地味にスゴイねという評価を頂いた。ほっとけ。


ここまで走馬灯を見て思い出したが、夢中になったものの記憶が無い。確かに何をやっても平均の壁を越えられなかった俺だったが、それこそ寝食を忘れてのめり込むようにやったものがあったハズだ。


………思い出そうと集中したら、金髪碧眼のおねーちゃんにナデナデされる光景が浮かんだ。微笑んで手を向けてくる。

あれ?俺が熱中したのってイカガワシイお店だったっけか?いや、違うハズ。集中しよう。



………なんでだろう?今度はブラウンな髪をしたショタボーイが笑顔を向けて来る映像が浮かんで来る。俺って生涯を通してショタコンだったの?うん、違うんだ違うハズだ。よし、つぎはアプローチを変えて集中しよう。



あ、そうだった。俺って将来お侍か岡っ引きになりたかったんだっけ。ドラマの時代劇に激ハマりして小さい頃から道場に通ったんだったな。どーして忘れてたんだろ?確かそこでもイチバンにはなれなかったし平均平凡という評価は取れなかったけど周りがドン引きする位熱中してたな。手裏剣術に捕縛術、十手術と短刀術、岡っ引きに必要な技と、何故か剣術と格闘術を学んでた。



なんて昔をしみじみ思い出していたら今度は心配そうな顔をした茶髪の青年のイメージが出てきた。そう言えば両親もこんな顔して道場に通う俺を見てたっけ。




んで大学に入って酒と煙草を覚えても道場に通ったな。その頃には師匠の爺さんから地味に才能あるねなんてリップサービスを貰った。正直逃がしたくないんだろうと思ってたんだけど、なんでも現代じゃ役に立たない戦闘とか格闘技の才能が俺にはあったらしい。よくわからんけど、そういうコトなら試してみようと総合格闘技を始めてみた。結果は当然平凡普通という評価だった。おい、じーさん!まぁそれでも総合格闘技は楽しかったんだけどね。関節技だったり寝技だったりでポイント稼いで判定勝ちが殆どだったから地味に強いねと評価されたけど。



あ、また俺を心配そうに見つめる茶髪の青年が出てきた。やけにリアルなガイジンさんだ。お、頭をナデナデして来た。表情は浮かないまんまだけど。でも感触リアルだなぁ。走馬灯のハズだから見たコトあるか体験したコトあるはずなんだけど、ホームステイしたこと無いしなぁ。



「ジニール、今日から君に魔法を教えるよ。」



OH、映像が話したわ。てかいきなり


「魔法って、どういう、こと?」



あれ?俺の口から声が出た。目の前の茶髪あんぐりとした顔してる。ん?ぅおっ!いきなり頭に知識が流れ込んで来たあっ!



…………………嘘?俺、転成?

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