第六話 償う
「俺は一切手加減なんかしねぇ!殺される覚悟があるなら俺にかかってきな」
空気が一気に重くなった。
冷たい風がルシファをツンと貫く。
「ファイヤーアロー!!!」
先制を仕掛けたのはルシファの方だった。
炎の矢は絶え間なくシャルゴに襲いかかるが、シャルゴにはいとも簡単に避けられてしまう。
「こんだけ量が多くても当たらなきゃ世話ねぇな!」
(でも、シャルゴも近づくことができてない!!ルシファはいい感じにシャルゴとの距離を保てている!)
だが、シャルゴはルシファの周りをビュンビュンかけ巡って行く。
次第に、加速、加速、加速!!!!!!
周りの木屑や草や土が宙を舞う!
「必殺…暴風!!」
「!!?」
ルシファの周りは絶対逃げれないようになっていた!
(規格外すぎる…)
勇はルシファに何が起こっているのか。どこにいるのかすらわからない。
「終わりだ!!」
シャルゴは勝ちを確信して、思わず笑みをこぼした。
「それがあなたの必殺技なのね…じゃあこっちも本気で行くから!!」
ルシファは地面に手を置いた。
ルシファの体温が急上昇していき、体からとてつもない熱気を発している。
「オーバーヒート!!」
ルシファの手からものすごい量の炎が吹き出し、風の中を炎が舞巡り暴風は火災旋風となりまるで炎の柱のようなものができた。
「やめて!!そんなことしたら自分も焼かれる!!」
勇は必死に叫んだがもう遅かった…
シャルゴもこれには驚き、自爆したのか?と思ったが自分も巻き込まれて、そのまま火災旋風に飲み込まれた。
しばらく経って、もう嵐はなくなり、勇がルシファの状況を確認しようとした時、ルシファはピンピンしており、焼かれたようなとこはどこもなかった。
「ルシファ!大丈夫!?」
「うん!これでシャルゴも倒せたでしょ!それより、イサムの方こそ酷い怪我したんじゃない?」
「確かに痛いけど、もうだいぶ落ち着いてきたよ…いや、普通にめちゃ痛いけど!!!」
カサッ。咄嗟に勇とルシファは身を構えた。
「まだだ、まだ終わってねぇ…!」
もう身もボロボロで体が限界のはずだが、それでも、まだ、こっちに向かってくる。
「もう、終わった!!お前の負けだシャルゴ!早く紋章を返すんだ!!」
なんとか説得してみるが全く通じない。
「シャルゴ。あなたがやったことは確かに悪いことだよ、信用だって、周りの人だって君のことを見放すと思う。でも、まだ取り返せる。」
ルシファがシャルゴに話しかける。
「うるせぇ…つってんだ!」
シャルゴがルサファに殴りかからが勇に素手で止められる。
時を止めた訳ではない。
「速度が落ちてる。もう限界だよ…」
その瞬間、シャルゴの今までを支えてきた丈夫なあしがガクッと一気に崩れた。
「もう、無理だ…たくさん殴った、たくさん盗んだよ、周りから恐れられて、離れていって…たくさん盗んだはずなのに、俺の手にはなんも残っちゃいねぇ。」
顔を俯いたまま地面にポタポタと涙が落ちてた。
「ほら、紋章だ、これで盗んだもんは返した。一つ、お前に頼みがある…もう、殺してくんねぇか?」
パチンッ!!
ルシファがシャルゴの右頬を思いっきり引っ叩いた。
「罪を残してこの世を去るなんて考えるな!!悪い事したって思ったんでしょ?だめだって諦めて、もう、何をしたらいいかわかんなかったんだろ?それでも誰も頼れる人なんていなくて、行き詰まってたんだろ!!」
シャルゴは一瞬唖然としたがすぐに言い返した。
「あぁそうだよ!!頼れる人なんていなかった!親だって小さい頃に亡くなって!こうしていくしか道が無かったよ!どうすればよかった!?どこで踏み外した!!そもそも、スタート時点で詰んでたんだよ…」
「…」
一瞬黙ったあと、ルシファはさっきの表情と違い優しい口調でシャルゴに命令した。
「私の騎士になりなさい。私の下で働いて、何十、何百、何千もの人を救いなさい!」
「は?今更何言ってんだ!周りからもよく思われてねぇ俺が!?みんなを救えだと?ふざけんな!…もう俺には何もできねぇよ!騎士になったって、みんなが俺を馬鹿にして、罵って終わるだけだ…」
「そうだ、お前は馬鹿にされるし罵られもするよ」
勇がシャルゴに歩み寄る。
「でもそうやって失った信用を取り戻すには、どうすればいいか教えてやるよ…"償う"だ。これまでやってきたことを償って償って、そうやって、信用を取り戻すしかない!」
勇がシャルゴに手を差し伸べる。
「もう、おせぇよ…もう…」
「選べ。シャルゴ。挫けたってもいい、項垂れたってもいい!それでも、何か一つでも変わりたいと思ったその時がいつだっておまえのスタートラインだろ!」
「いいのか…俺みたいなやつが」
「1から俺たちとやり直そう。1から俺たちと信頼を築いていこう!」
「だから、一緒に来い!!シャルゴ・シャンデル!」
日は沈み3人を月光が照らしている。シャルゴは勇の手を取り、立ち上がった。
「俺の名前はシャルゴ・シャンデル、パラズ王国一速い男でパラズ王国一評判の悪い男だ。もう、どうなってもしらねぇ!俺のせいでお前らの評価が下がっても、責めんじゃねぇぞ!」
シャルゴはニッと勇に笑いかけた。
「俺もお前も人気なんて下の下だ!あとは上がるべし!!」
「よろしくね!シャルゴ!」
俺もお前も、こっから始めていこう…!
シャルゴ・シャンデルがルシファ達の仲間になった!
クロノマン。〜後日談〜
勇:「しかし、痛ってぇ〜ほんとこんな強く殴ることないだろ〜、シャンデル〜」
勇とシャンデルも晴れて下の名前で呼び合う仲になった!
シャンデル:「イサムだって俺のこと思いっきりぶん殴ったんだからおあいこってやつだ。」
勇:「にしてもお前、そんな怪我しといてすげぇ元気そうだよな…」
シャンデル:「これでもちょっとは痩せ我慢してるけどな!まぁあとで回復魔法でもかけてもらえば済む話だ!」
(また化け物が増えた気がする…)




