第十七話 絶望の淵へ
「相手が飢餓なら、もしかしたら遠くの地域も被害が出てるかも知れません」
頭の中でリゼリアの言葉が頭から離れない。
(飢餓っつぅのがなんなのかよくわかんねぇ!でも、もしその飢餓の影響で俺たちの村まで被害が出てたらミディアが危ねぇ!!)
シャンデルは一目散に自分の村へ走って行った。
あの時、帰ったら抱きしめてやるって約束したんだ。
そうして、走っているうちにシャンデルは自分の家の貧民街についた。
しかし、辺りを見渡すとやはりゾンビで溢れかえっていた
「ックソ!やっぱりだ!!」
ダッシュで家のドアを開けミディアの安否を確認する。
「おい!!ミディア!大丈夫か!?」
辺りを見渡したらそこにはミディアがこちらに背を向けて座っていた。
それを見たシャンデルはホッと息をついて、ゆっくり喋りかけた。
「な、なんだいんじゃねぇか、心配したんぞ!」
「…」
「ここは危ねぇ!俺とお前で早く逃げよう!大丈夫だお兄ちゃんがいれ…」
「ディア…」
「え?」
急に何やら小言でボソボソと呟いている
「ミディアってこの子のこと?」
ミディア…だと思っていた子が後ろを振り向いた瞬間
そこには口と手足を縄で縛られているミディアを抱えている一人の少女が座っていた。
どうやらミディアは意識がなくなっているらしい。
「はっ!?だ、誰だ!ミディアから離れろ!!」
シャンデルが話しかけたら、でかい目でパチパチと瞬きをして、不気味な笑顔で、こちらにニヤリと笑いかけてきた
「やだね、大切な家族なんでしょう?きみが命をかけてでも、そう願うなら解放してあげるよ!だから私を捕まえて!!」
トントン
そう彼女が足を鳴らした瞬間四方八方から大量なゾンビがシャンデルに襲いかかってきた。
「なに!?」
「じゃぁね〜」
そういって彼女とミディアはゾンビの波に飲まれていって行方をくらました。
「待て!!」
咄嗟に、周りのゾンビ達を蹴散らしてさっきの少女の行方を追いかける。
「くそっ!どこだ!どこいきやがった!!」
村中探してみてもどこにも見当たらない。そうしていたら上から声が聞こえてきた
「ここだよ〜、お兄さ〜ん!」
そう聞こえて振り返ってみると家の高い屋上から少女がミディアを抱えてこちらを見下ろしている
「こんなとこにいやがったか、早くミディアを返せ!さっきのゾンビといい、本当にお前はなんなんだ」
シャンデルが彼女に名前を聞いた時、ここから彼に一生記憶に残る名前を聞くことになる。
「んー?わたし?私は… エヴィス・フェルガ。七災の飢餓を担ってるの!よろしくね!」
飢餓…リゼリアの言ってたあの飢餓だ。なんでこんなとこにいるんだよ…ちくしょう
不安、焦り、そして何より怒りで、シャンデルの頭がいっぱいいっぱいの時、唐突に彼女が終わりを告げる
「さぁそろそろかなぁ〜見せてよ!きみの運命を!ここが‥きみの人生の岐路だ。」
その瞬間、エヴィスがミディアを高く投げ飛ばした。
それを追うかのように無数のゾンビ達が彼女を襲う!
「ミディア!!!」
シャンデルにが踏ん張ってミディアの元へ勢いよく飛び込んだ。
その飛び込んだ瞬間、エヴィスの顔が目に入った。
それはまるで、世界で一番幸せな人のような満面の笑みでこちらをみていて、そこには口では言い表すことのできない不気味さと恐怖で満ちていた。
「なるほど…それがきみの運命か」
シャンデルの手は惜しくも届かなかった。
意識を無くしているはずのミディアがこちらを悲しい目で見てるような気がした。
「……あっ…うわあああああああ!!!!!ミディア!待ってくれ!嘘だ嘘だ嘘だぁぁ!」
まさにこの世の終わりかのような叫び声でシャンデルは何度も何度も泣き喚いた。
それを嘲笑うかなごとくエヴィスはシャンデルに問い続けた。
「フフ、ハハハッ!!最高です!あなた最高に…本当に…懸命、なんですねぇ!!」
「…ッッ黙れ!黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙
れ!!!!」
彼はまだ12だった、普通の子だったら親からちゃんとした愛を受け、悩みを打ち明けられる友達もできて、
好きな人もできる。そんな年頃だった。
しかし、シャンデルはその全てを失った。いや、最初からそんなものはいなかった。
あったのはたった一人の妹、ミディアだけだった、そのたった一つの心の支えがすべてが今日崩れ落ちた
「いいですねぇ!私、あなたのことがとても好きになりましたよ…また、どこかで、あなたが死ななければ…いや、きっとそんなことは無さそうですね、どこかで運命が私たちを巡り合わせてくれますよ」
エヴィス・フェルガ、あいつを殺す。ころさなきゃいけない、殺意じゃない使命感のような感情が胸の奥から全身へと伝わっていく。
「さよなら、お兄ぃさん、また会ったら名前くらい聞かせてよ」
そういって彼女は闇の向こうへと消えていく、
「‥待て!殺す!俺がお前を殺してやる!!絶対に…殺してやる!!!」
闇の中で彼女の笑みが鮮明に見えた。




