第十六話 鼠賊
俺には本当に大事な、一人の妹がいた。
物心ついた時から親は父親だけでその父ですらお酒にふけていって外でトラブルを起こしてそれっきり、
俺と妹はいつも二人だけで生活していた。
妹の名前はシャルゴ・ミディア。年齢は6歳。当時はシャンデルもまだ10歳でとても二人で生活させていいような年齢ではなかった。
シャンデルはそれでもミディアのことを愛していて、生き延びるために、盗みを働いた。
この時からイサムに出会うまで彼は盗賊として人生を歩むことになる。
そうして、盗みを働いて早2年、シャンデルはここらですっかり悪い噂が広まり、"鼠賊"と呼ばれた。
「お兄ちゃーんお腹すいたー!」
そっと近づいて顔を上げるミディアにそっと頭を撫でて優しく微笑みかける
「あーそろそろ飯の時間にすっかな、ちょっくら出掛けてくるよ」
そういうと、ミディアがシャンデルにガシッとしがみついて離れない。
「まってー!ミディアもついてくー!」
「ダメだ!何が起こるかわかんないんだぞ、危険な目にあったらどうすんだ」
シャンデルはミディアが妹であることを隠していた。
もし、あの鼠賊の妹だとバレたら妹が危険な目にあうかもしれない。
ミディアを叱責した後シャンデルはしゃがんで微笑みかけた。
シャンデルは少し不貞腐れたような顔で頬を膨らませていたミディアの手をそっと握った
「帰ってきたらいくらでも抱きしめてやるよ、だからちょっとの間待ってろ」
「…はーい」
そう言ったあと、いつものようにシャンデルは盗みを働いた。
シャンデルは近場を避けるために少し離れたセグララ村まで行っていた。
セグララ村は商業が盛んでまさに盗みにはうってつけその代わりちゃんと対策も取られているのでかなり上級者向けだ
「ッノヤロー!またきやがった!」
鼠賊対策に商店前にイカツイ商人がゾロゾロ出揃ってきた。
「お、今日もいやがんなー?」
しかし、体格差なんて感じないくらいにヒョヒョイと簡単にくぐり抜けられてしまった。
「チクショー!待ちやがれ!」
気づけばシャンデルの手には大量の食料を抱えており、まんまと逃げられた
「ごちそーさーん!!また来るぜー!」
そう笑顔で言い放ったシャンデルに商人流石にブチギレ、しかも贅沢に、高級なものばかり取っていくもんだからたまったもんじゃない
「二度とくんなクソガキが!」
そうして、村を出ようとした時、
「待った、鼠賊さん」
シャンデルの行く手を挟むやつが現れた。
「あ?誰だ」
そこには一人の少女とまだ幼い騎士がいた。
なんともまぁ上流階級のような格好ばかりで貧乏だったシャンデルにとってはかなり鼻につく。
「私はリゼリア・クローデル隣にいるのはシシノ私の騎士です」
そういうと、シシノが前に出てこちらに剣を向けてきた。
「君が鼠賊か、君は知ってるか知らないがかなりここでは有名になっていてね、どこの店からもあいつをどうにかしてくれっていうもんだから来てみたが、なんだ僕と同じくらいの歳だったのか、」
舐められたような気がして負けじとこっちも反論する。
「ケッ!随分と偉そうじゃねぇかそういうお前は俺に勝てんのかよクソガキ!」
「クソガキ…かきみと対して変わらないと思うけどなぁ〜」
はっきりとイライラしているシャンデルに対して大人のように落ち着きがある、でも、どこかでバカにされているような、いわゆる冷笑ってやつだ。やっぱムカつく
「それと…さっきの勝てるって話だけど…勝てるよ」
「‥っえ!!」
その瞬間シャンデルの首元になかったはずの剣が気づけば背後にシシノが立っていた。
急にやってくる死という感覚がじわじわと体全身に伝わっていく。
「ほらね?」
(何が起こったんだ!?瞬間移動?いくらなんでも早すぎる!)
それはまるでこの先会うイサムと対峙したような感覚だった。
自分より速い、これがどれだけ屈辱なのか、屈辱で屈辱で抑えられない怒りよりも近づいてくる死という感覚が上回り気づけば足が震えていた
「御託はいいから早く片付けて、シシノ」
そうリザリアが言うとはい、と返事し、こちらに刃先を向けてきた。
し、死ぬ…ヤッベェこれはやばいやばいやばい!!
妹は?妹が一人にあいつ一人じゃぜってぇこのさきやってけないのに…!
その瞬間、町からきゃーという悲鳴が響き渡り、シシノがパッとそっちの方向を向いた瞬間、シャンデルは腕を払いそのまま勢いよく飛び蹴りをしてなんとか危機を脱した。
「…ックソ!」
シシノが反撃しようとして剣を構えた瞬間、
「待て!シシノ、飢餓がきた」
そう言われて周りを見てみたら街中がゾンビに襲われていた。
「…これは」
見たこともないなんとも悍ましい光景が広がっていた。
「今はこっちを倒すのが優先です!相手が飢餓なら、もしかしたら遠くの地域も被害が出てるかも知れません急ぎましょう」
「…わかりました」
そういうとすぐに街中の人たちの方へ走っていった。
「助かった…のか、早く急いで戻らねぇと」
ホッと息をついた瞬間、とてつもなく嫌な予感がシャンデルを襲った。
「…ミディア!!」




