第十三話 小僧と小娘
「時よ…止まれ!」
(完全に相手の動きを見て避けられる!)
こっちはもうボロボロのレーヴェとピンピンしている勇で完全に有利な戦いになっていた。
「オラァ!」
レーヴェがやつれながら攻撃をしてきた。
(もうここで決める!!)
ちょっとでも傷をつけたら勝ちな部分…頸動脈を狙う!
シュッ!静かにレーヴェは倒れた。
「俺の勝ちだレーヴェ。」
勇はアリスの方に駆け寄る。アリスは何やら口を必死に動かして少し様子がおかしい。
「おい…アリス!大丈夫か!何ていってるんだ?」
「…だい…き…る…」
「え?」
「まだ…生きてる…!」
「!?」
後ろを向いた瞬間にはすでに勇の肩に刃が通っていた。
「時よ止まれ!」
ポタポタと血が流れ落ちる、焼けるような痛さに勇はその場で悶絶した。
「痛ッッ!」
刀を抜いて、そのまま倒れてしまった。
時は動き出す。
「ッチ見破られたか…俺の初見殺しのスキルなのによ」
まずい…まずいまずいまずい!痛くて今すぐ戦えるような状況じゃない!
「だが、その様子じゃもう終わりだな…」
アリスが勇に前に立ち、剣を構える。
「先にこっちを相手してもらおうかしら…」
魔力切れを起こしてるのに無理に立っている、今すぐにでも倒れそうな足だ。
「おいおいあんまり無理すんなよ…そんな急がなくもすぐ楽にしてやるから!」
そういって2人の剣がぶつかり合った。アリスはもう瀕死のはずだがレーヴェと互角に戦えている。
(俺が助けに来たのに…また足引っ張ってる!ちくしょう動け!動け!勇!)
「流石に強いが、防戦一方じゃねぇか!そらそろバテてくる時じゃねえのか?」
やがてレーヴェが押し気味になり、どんどんこっちにのけぞってゆく。
「あっ」
アリスの足がもつれてその場に倒れてしまった。
「終わりだ!」
「いやまだだ!」
勇が剣で防ぎ、なんとか守り抜く。
「時よ止まれ!」
手、お腹、背中、特に足を重点的に切り刻んだ。
「お前が死なねぇなら、何もできねえくらいに痛みつけてやるぜ!!」
「ぎゃー!ッグァ!」
「今日一の叫び声!今だ戦略的撤退!!」
「え!?ちょっと!」
勇はアリスの手を引いて少し離れた草むらに隠れた。
「ここまでくれば安全…いや、時間の問題だな。」
アリスが勇の手を払い、勇に怒鳴った。
「何やってるの!?あいつ1人なら私1人でも勝てるのに!村だってまだ安全じゃないの!あいつを1人で放っておくなんて信じられない!」
「は?そんな言い方ないだろ!さっきだってお前1人じゃやられてたじゃねぇか」
そういうとアリスはふらつきながら1人でさっきのとこへ歩いた。
「もう…負けないから、イサムは村の人たちを非難させて…アッ!」
足につまづき転びかけたところを勇が支える。
「お前はバカだ!誰が何と言おうとだ!」
「…は?」
「自分の非力を痛感したんだろ?それで遠くしか見えずにこんな石ころにつまづくなんて大馬鹿だ!」
アリスの瞳に涙が浮かんだ。勇は自分で怒っておきながら少し驚いた。意外に打たれ弱い…?
「遠くのことに夢中になるのもいいよ…でもその前に近くの仲間を頼れ!お前がこんな石ころにも気づかないくらいに追い詰められているのに俺はお前に1人で背負わさせようだなんて事は絶対にさせたくない!」
「ご、ごめんなさ…」
「違うだろ?お前が今俺にかける言葉は」
勇はアリスの肩にポンと手を置いてまっすぐ見つめた。
その時、アリスは自分の服がところどころ破れて、泥だらけになっていることに気づいた。
(私に…仲間)
少し間を置いてさっきの子供のような顔からキリッとした顔に戻った
「村の人たちを助けたい…協力して!!」
勇は立ち上がって拳をギュッと握った。
「もちろんだ!!」
「やっと見つけたぜ…全くさっきは酷い目にあった。
わざわざ自殺してまで全回復したんだからな?もう逃がさねぇ!」
勇たちの前にレーヴェが駆けつけてきた。
アリスは咄嗟に立ちあがろうとしたが勇が手を前に出して、アリスを後ろに下がらせた。
「よぉーレーヴェさっきは痛かっただろ?今度こそ正真正銘!お前を倒すぜ!」
レーヴェは剣を構えて嬉しそうな表情を浮かべた
「やってみな…小僧」
「小僧…?んー。ちと違うな…お前を倒すのは…俺とアリスだ!言うとしたら…」
勇はニッと笑った。
「小僧と小娘、だな!!」




