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最終話(前)改朝、そして時代の換代へ

 俺は天下を統一後、しばらくして

 徐々に社会構造や政治体制の改革を進めた。


 俺の代だけで思い描く完成に至れるとは思わない。

 でも少しずつ進めていかなければ、

 俺や次の世代が統治している間だけ平和……では駄目なのだ。


 民主主義は不可能だ。

 識字率、情報伝達の壁、宗教観。

 あまりにも課題が多すぎる。


 兎にも角にも最大の課題は、

 豪族から権力を餌に武力を取り上げる必要があること。


 現代で例えれば、都道府県が軍隊を持って自立しているのだ。

 そりゃ、中央の影響力が弱体化すれば好き勝手し出すってものだ。


 あぁ……頭が痛い。

 歴史シミュレーションゲームが好きなだけの

 大学生には荷が重すぎる。


 大体、近代や現代はあんまり好きじゃなかったんだよ……

 正直、今考えている事が合ってるかも自信がない。


 一番、話が通じそうな深窮に相談してみた。


「面白い事考えはったね。でも難しいんちゃう?

 だって、急にお隣さんが武装解除したから

 お前も武装解除しろって言われても信用できひんやろ?

 虞業が当時、そんな事言ってきたら絶対罠やん?」


 ぐうの音も出ない。


 これは深窮の予想通りとなる。

 幾度も旧弊を脱せない豪族の抵抗に揺さぶられ続ける事になった。


「分かってはいるが、礎を築き切り拓く必要があるのだ」


 俺は龍家のみが国の軍権として、君臨すれども統治せずを進める。


 その過程で議会制(上院・下院)を導入し、

 上院に豪族・重臣枠、下院を都市・功労者枠代表者とした。


 豪族の砦(塢壁)は街道で結んだ市として扱い、頭領を市長とした。


 信用してくれれば美味しい思いが出来ますよと、

 末端の豪族から口説いていった。


 そして、発展した市を攻めるような豪族は制裁した。


 教育とインフラ整備を進めて、識字率が上がると、

 市の中に市邑会を設けた。

 都市代表・富商・技術者が予算(税)の使い道を提案可能にする為だ。


 次に官報能力試験を設け、

 家柄よりも能力のある実務家を重用する制度を採用させた。


 揚嫂上に教育の必要性を説いた。

「我々、女の生き方も変わっていくのですか?」


「すぐにとは言いませぬ。

 だが、いつかそのような時代がくると信じている。」


 監史台という、両院の腐敗監視や役人の不正摘発をする組織を作り、


 それぞれが疑似三権分立のように、

 都市代表(民意)、貴族院(豪族・官僚)、監察組織(腐敗監視)が

 相互に監視する仕組みとした。


 そして……

 ――最後に。


 数十年後、龍家から軍権と徴税権を「議会」へ譲り、

 龍家の本流を「民の意志を承認する象徴」へと再定義した。


 紫音に武力の放棄を伝えた。


「その武があれば皇帝として何不自由なく暮らせる身分を捨てるか。

 だが、そう言っても止めんのだろう?」


「まだ反発する豪族もいる。身の安全を守る必要もある。

 だから一度に武力を全て放棄することはしない。

 「だが……皇后ではなくなる。すまない。」


 俺は晩年、豪族から「血迷った老いぼれ」と命を狙われた。

 民衆からは「王朝を弱体化させた暗君」と誹りを受けた。

 龍家の統治社会が良かったと。


 歴史的評価が変わるまでは、「強権の狂人」と呼ばれ続けた。


 死後二百年以上が過ぎた頃、

 当時が「民本主義的・封建議会制」と呼ばれはじめ、


 歴史家が、完璧な完成品ではなく、

 「自由民主主義の萌芽」あるいは「早すぎた夜明け」、

 だが未来に咲き誇る大樹の種を、戦火のあとの大地に静かに蒔いた

 未来へ続く第一歩の「孤独な偉人」と評した。


 だが、彼は決して孤独ではなかった。


 俺は横たわり、紫音に手を握られ

 子や孫に見送られながら、

 この世での生を終えようとしていた。


「すまなかった……

 お前たちには色々と苦労をかけた……」


「まったく……おかげで退屈する暇がなかった」


 紫音の歳を重ねてまだ、豪快な返事に思わず笑ってしまう。


「ふふふ……」


 そして、深く息を吸った。


「俺はお前たちに謝らないといけない事が……」


 皆の人生を“設定”の巻き添えにしてしまった……


 紫音が俺の頭を撫でた。


「もう良い。十分頑張ったのだ。

 それが何であろうと、その“呪縛”から解放されてよい。

 他の誰が何と言おうと、私が許す。

 だから、もう何も気にせずゆっくり休め」


「そうか……ありがとう。

 紫音、君に会えてよかった。」


「ああ、私もだ。」


 そして、俺は眠る様に息を引き取った。


 ――そう思っていたのだが、息を引き取る前の刹那に神様が現れた。


「何です? まだ何か?」


「いや……お主はよくやってくれた」


「そうだろう! 正直大変だった。

 それでも……恨みはない」


「……そうか。それでな、お主に褒美をやろうと思ってな」


「俺の褒美はもう使いましたよ?」


「あれは、儂が負わせてしまった責のようなものじゃった。

 だから、改めて問おう」


「なら……ありがたく……こんな内容でも大丈夫?」


「……ふむ、それだと二つになるが、まあ良い。

 特別にサービスしてやろう」


「お? 言ってみるもんだ。

 それじゃ、期待してますよ」


 そう言って、俺は神様に褒美を貰うことができた。

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