外伝・第5話 日常、そして潭沢と弥安へ
御瀾が龍家の版図となった後、
俺は龍玉から潭沢と弥安との思い出を聞いていた。
「静零、本当に美しい音色だ。
……きっと都でも、これ以上の弾き手を見つけるのは難しい。」
「柔温様、ありがとうございます。
ただ、少し褒めすぎではないでしょうか?
そんな風に真っ直ぐ言われると、面映ゆいです。」
「いいえ、主の琴の腕前は、龍家の中でも並ぶ者がいません。
少主のおっしゃる通りです。」
「さて、今日は贈り物があるんだ。
以前、市場に流れてきたら欲しいと言っていた楽器……
都で流行っているという『翼竪琴』だ。」
「まさか、覚えていてくださったのですか?
……本当に手に入るなんて、感謝の言葉もありません。
一生懸命練習して、きっと弾きこなしてみせます!」
静零は溢れ出す嬉しさを抑えられず、
思わず隣にいた侍従の弥安に抱きついた。
「なりませぬ、主!
少主の前で、はしたなき真似をなさっては……!」
「ふふ、良いんだよ。
静零なら、きっと見事な音色を聴かせてくれることだろう。
楽しみにしている。……それにしても本当に仲が良いね。
実の姉妹でも及ばぬほどだ。」
「この者は、私にとってかけがえのない、姉君にございます。」
「主……。私には、あまりにも勿体ないお言葉です。」
「いつか、私の兄たちと柔温様を囲んだ宴の席で、
この音色を披露できたら楽しいでしょうね。」
「そうだね。その時はぜひ、義兄から静零の子供の頃の話を
聞いてみたい。」
「柔温様……。妙な事まで聞き出さないでくださいね?」
静零は、失われた幸せな時間を一つ一つ慈しむように、
大切に語り続けた。
俺は何も言わず、ただ静かに頷きながら、
紡ぐ言葉に耳を傾けていた。




