外伝・第3話 日常、そして龍紅と阿玲へ
──龍輝と龍玉が成人する前の話──
「ねぇ、大兄。何となくなんだけど……
二兄って、十二歳のある日から何か変わったよね?」
阿玲が龍紅に問いかける。
「そうだな。表面的な部分は大きくは変わっていないが、
芯のような部分が少し雰囲気が変わったな」
「そうだよね?
だって、それまでは屋敷の年の近い子供たちを連れて遊んでいたのに、
それから見かけなくなったし」
(あー……俺がこの世界に神に連れられて意識を持った日のことだよな……)
そういえば十二歳から自我というか意識ができたわけだが、
それまでの俺ってどうなっているんだ。まさか……
「安心してよい。
乗り移ったとか魂を追い出したとかではないぞ」
「神様が突然、現れないでくれますか?」
「なんじゃ、人が折角、親切で教えてやろうと思ったのに」
「……ありがとうございます。
それで、十二歳までの俺は何なんです?」
「お主が分かる言葉で言うと、魂はお主じゃが……
“オートプレイ状態”だったという感じじゃな。
お主の精神性+年頃の少年がやるような遊びや学びを
自動で行っていたような状態じゃ。
子供たちを連れてというのも、
本来のお主が十二歳ならそういう遊びをした、ということじゃろう」
「なるほど……
それでオートプレイ終了時に、それまでの経験が反映されたって感じなのか。
わかった、ありがとう。おかげですっきりした」
「うむ。他に何かあれば答えておいてやるぞ」
「あー……設定のことなんだけど。
例えば、俺が設定した夫婦で子供とか設定していない場合、どうなるんだ?」
「設定がなければ自由、本人たち次第じゃな。
お主が設定している場合も、設定が終わった後は自由じゃ。
でなければお主の一族、滅亡が決まることになるじゃろう」
「つまり、設定が強制イベントで、
それまではロックがかかってる状態みたいな感じか……。
例えば“今年、子供が生まれる”と設定している場合、
その子が生まれるけど、生まれてからはフリーイベントになる、と」
「うむ。だからもし──
お主が設定より多くに妻や子供が欲しいとなった場合は、
そこから先はお前の“頑張り”次第じゃ」
「いや、そんな予定はないけどな!」
「ふむ。聞きたいことはそれでしまいかの。
では、また会おう」
そう言って、神様は消えていった。
「二兄! 何をぼーっとしてるの?」
龍紅と阿玲が俺を心配そうに見ている。
「ああ、すまん。ちょっと考え事をしていた。
それで、えーっと……
そうだ、龍家の次男としていつまでも悪童を引き連れて
遊んでいるわけじゃないと自覚したんだよ!」
とっさに出てきた言い訳をする。
「それは良い事だな。
確かにそれくらいの時期から、武芸の鍛錬も経典の勉強も
放り出さなくなったな」
阿玲はまだ胡乱気な目で俺を見ている。
「さて、今からどうするか!」
俺は無理やり話題を変える。
「私、久しぶりに大兄の琴が聞きたい!」
「えっ、大兄って琴を弾けたのですか?」
その辺を設定した記憶はない。
いや、別に苦手とも設定していないはずだけど。
「あまり得意ではないが……」
と謙遜しつつも、龍紅が演奏した音色は
とても力強くも品があった。
得意でなかったとしたら、相当に練習したのだろうと、
龍紅の努力が窺い知れる。
そして龍紅が
「やはりこの家で一番の琴の名手は阿玲だな」
と言うと、阿玲がくすぐったそうに照れて笑う。
その後も三人で笑いあって、
兄妹三人の穏やかな時間が過ぎていった。




