第31話 青廬、そして初めての契りへ
【他連載のお知らせ】
▼TS・勘違い・無双コメディ(不定期連載中)
『[TS]人類が中世レベルまで衰退した未来。伝説の殺戮ロボに転生した俺は、最強のハッキング能力とエルフメイドの体で、理想の美少年を合法的に(?)育成します。』
https://ncode.syosetu.com/n2867mf/
▼和風ダークファンタジー(不定期連載中)
『六装の守護者 ―不銹不折―破邪の鋼刃――』
https://ncode.syosetu.com/n3023me/
用意された青い天幕に二人で入ると、
薄暗い帳の中には蝋燭の火が揺れ、
一杯の酒と一切れの肉が静かに置かれていた。
まずは婚礼の服を脱ぎ、白い薄衣だけの姿になる。
すると紫音の褐色で美しい健康的な肌が露わになり、
蝋燭の光に照らされて浮かび上がる。
それは思わず息を呑むほど妖艶だった。
俺は緊張で心臓の鼓動が高鳴るのを抑えられなかったが、
紫音の顔を見ると、頬が紅く染まっている。
……紫音も緊張しているようだ。
紫音は結ばれていた髪をほどき、ゆるりと撫でおろす。
この時代、この姿を見られるのは夫となる男だけだ。
思わず見とれてしまった。
そんな俺の様子に気づいた紫音が、そっと微笑む。
一膳の前に二人で座り、
俺は紫音と共に酒肉を分け合い口にして、誓いの言葉を述べる。
「行く末に如何なる幸い、
如何なる苦難あろうとも、
此度の酒肉の如く二人して分かち合わん。
比翼連理の契り、終生変わらぬことをここに誓う」
紫音は静かに応じる。
「貴方が光り輝く陽ならば、
私はその足元を支える影となりましょう。
光と影が分かたれぬように、この身もまた、
貴方様より片時も離れぬことを天に誓います」
次に、お互いの髪を白銀の鋏で切り、
赤い糸で硬く結び合わせて袋に収めると、紫音に手渡した。
「束ねし髪は二人の魂。
この赤縄に結ばれたる縁は、たとえ刃を以てしても断つこと叶わぬ。
我ら、今より終生一徳一心なり」
紫音は袋を胸に抱き、深く頭を垂れる。
「この結髪を貴方様と心得、
いかなる時も、いかなる地にあろうとも、
終生の宝として肌身離さぬことを誓い奉ります」
誓いの儀を終え、
二人は静かに寝所へと向かう。
紫音は恭しく指を揃え、伏して誓った。
『今よりは、
この身はこの魂の影。
すべては君が御心のままに。
どうか、末長く愛でていただけますよう』
そして、互いの頬にそっと触れ合い、
静かに寄り添うように身体を重ね──
二人は、初めての契りを迎えた。
その夜、俺の胸には様々な感情が波のように押し寄せていた。
設定した紫音と、自由意思を奪った婚姻。
その上、初めてを奪ったという罪悪感と贖罪の念。
紫音の肌に触れた温もりと、胸の奥に残る心地よさ。
そして、これから歩む未来への不安。
それらが渦を巻き、言葉にならぬまま胸を締めつける。
気づけば俺は、眠りながら静かに涙を流していた。
「……寝たまま、泣いているのか?」
紫音は小さく息を漏らし、ふっと微笑む。
「ふふ……剣はあれほど強いのに、不思議な奴だ。
何か抱え込んで、言えぬ悩みでもあるのだろうな……」
そう呟くと、紫音はそっと俺の頭を胸に抱き寄せ、
包み込むように優しく抱きしめた。
「……婚姻の誓いを立てたのだ。
私が支えてやる」
その言葉を落とすように囁き、
紫音は静かに目を閉じ、再び眠りについた。
それから、二人の新婚生活が始まった。
とはいっても、成人した俺は本格的に
兄・龍紅を支えるべく、
朝から晩まで私兵の訓練や領地の見回りに追われ、
鎧姿で常に砂埃にまみれている。
紫音は麋寧や揚迪に、
使用人や兵糧の管理、一族の冠婚葬祭の作法などを教えられている。
そのうち、一人で取り仕切ることも出てくるだろう。
紫音に頼まれ手合わせもしているのだが、
最初こそ余裕だったものの、
だんだん手加減が難しくなってきた。
そんな姿を見た兵たちは、
「流石、龍輝様の奥様だ」と持て囃している。
弓腰姫ならぬ、剣腰姫といったところか。
紫音を打ち据えないようにしていたら怒られたが、
俺が「お前の太陽みたいに美しい肌に痣を作りたくない」と言ったら、
紫音は豪快に笑いながら、
「そうか、なら仕方ないな。
この身体はお前のものだからな」
と許してくれた。
……ただ、その晩の寝所では、
別の意味で許してもらえなかった。
そうしてしばらく経ち、
俺は龍紅と共に、親父に呼び出された。
最後までお読みいただきありがとうございました。
応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】で
足跡を残していっていただけると励みになります。




