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第2話 経典、そして武芸の鍛錬へ

胸を躍らせていた――のだが。


経典の授業は、正直退屈だった。


いや、内容は理解できる。

文字と一緒に教養や道徳を学ぶ、まさに文武両道の「文」。

龍輝として設定で初期パラメータを盛りに盛っていたおかげで、理解できないということはない。


……むしろ理解できすぎて退屈なのかもしれない。


欠伸と眠気を必死にこらえながら、たまに先生に暗記や解釈を問われては答える。


「うむ、素晴らしい。今日の阿刀は冴えているな。いつもこうであれば良いものを」


設定チートとはいえ、褒められるとちょっと嬉しい。


「何、これくらい大したことないですよ。何なら明日の分までそらんじて見せましょうか? もう覚えましたよ!」


「馬鹿者、調子に乗るでない。暗記も大切だが、そこにある意味を理解し、礼を尊ぶことが肝要だ」


叱られたが、先生はどこか嬉しそうだった。


「とはいえ、今日の授業はここまでで良いじゃろう」


「師君、ありがとうございました! 明日もよろしくお願いいたします!」


午前の勉強は終わり。そろそろ昼飯かな?

……腹が減った。


母のところへ行って、昼食の催促でもしてみるか。


「阿母、昼食はまだでしょうか?」


「何を言っているの。そんまでまだ時間がありますよ。まったく、しょうがない子ですね」


げっ……この時代って三食じゃないのか。


「え、えー……この空腹のまま武芸の鍛錬……? た、耐えられる気がしない」


「まったく。しょうがない子ですね。他の子には秘密にするんですよ?」


そう言って、阿母は台所から干し肉をそっと渡してくれた。


その笑顔は、子を愛する母そのものだった。


現実世界で父と母の顔を知らない俺は、胸が少し痛くなる。


「あ、ありがとうございます……阿母」


この人は俺が設定したキャラクター。

夫である龍健を支え、一族をまとめる第一夫人。気が強くて、しっかり者で――

そして龍健との間に俺を含めた子を持つ母親。


“設定したキャラ”という意識と、“阿刀としての感情”が混ざり合い、なんとも言えない気持ちになる。


俺は軽く頭を下げ、その場を後にした。


設定……か。


しばらく頭の中でいろいろな考えが渦巻いたが、ひとまず脇に置くことにした。


干し肉を白湯で流し込み、庭の鍛錬場へ向かう。


そこでは、槍を振るう少し年上の少年がいた。


「今日は早いね、阿刀。経典の授業、いつもみたいに寝て怒られなかったのかな?」


笑顔で声をかけてくる少年を見た瞬間、俺の中の“阿刀”が上機嫌で叫んでしまう。


「大兄! 推兄!!」


そこにいたのは、俺が設定した阿刀の兄――龍紅りゅうこう

強く、優しく、謙虚で、決める時は決める。跡継ぎとして完璧な兄。


すい兄! 今日は一緒に鍛錬できるの?!」


阿刀としての感情が、胸いっぱいに広がる。


普段は跡継ぎとして親父に連れられ、外に出ていることが多い。

今日は珍しく時間があるらしい。


「ああ、阿刀。今日は久しぶりに腕を見てやる。少しは上達したか?」


そう言って、俺に木槍を手渡してくる。


阿刀は設定でパラメータを上げている。

……手加減しないと、兄の面子を潰すかもしれない。


そう思いながらも、初めての武芸の練習に胸が高鳴る。


「胸を借ります、推兄。よろしくお願いします!」


こうして、俺と龍紅の手合わせが始まった。


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