ゲームスタート
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その声は頭に直接語りかけるように響いた。
その声には安心感があり、自然と聴き入ってしまうような優しい声。
だが、聴くものによってはその全てを包み込むような声が酷く不愉快に聞こえる。黒板を爪で掻きむしったかのような。いや、そんなものは比べ物にならないほどの声に聞こえない、ただの音。頭が割れそう。鼓膜を消し去ってしまいたい。そんな思いだけが頭の中を駆け巡って行く。
「あ、アアアァァァァァァ!!!」
少女にはその声がそんな風に聞こえている。
「やめろォォ!! そ、それ以上......喋るなァァァ!!!!!」
その声は神の声。聞く者に癒しと幸福を与える声。
しかし、魔の神である少女にその声は苛立ちと苦しみしか与えない。
『ジンさん大丈夫ですか?』
「俺は大丈夫だ。それよりあいつは大丈夫なのか?」
『魔の神の心配などしなくてもよろしいですよ』
ジンが魔神のことを気にかけるが、女神は心配などしなくて大丈夫だと言う。
魔神はすでに満身創痍になっているようで、先ほどまでの元気な少女の姿はどこにも無い。
「まぁ、神様に特に用事はねぇから、とりあえずこの頭に響く声やんなくていいぞ」
『分かりました。魔神は既に弱っていますが、くれぐれも油断なさらないように』
「へいへい、分かりましたよっと」
『では』
その言葉を最後に優しい声は消えて行った。
「さて、ちょっくら人命救助に本気出しますか!」
「ジン何するつもり?」
「何って魔神を助けるんだよ。ちょっと気になることが出来たからな」
「気になる事って?」
「それは内緒だ。今はな......」
ジンはそう言い終わると、魔法を発動していく。
「創造魔法 『偽の世界』『真実の隠蔽』『反射』『妨害』っと、こんなもんでいいか」
「ジンさん何をしたんですか?」
ひとしきり魔法を唱え終えたジンにプリンが思っていた疑問を投げかける。
「とりあえず、ここからの話はあの神様に聞かれちゃまずいからな。そのためにこの世界と全く同じ世界を作って、この世界と入れ替えた。ついでにここがバレないように『妨害』と、もしもバレた時ように『反射』の魔法をかけたんだ。今ごろ神様には俺と魔神が戦ってるように見えてるはずだぞ」
「ジンさんって本当は人じゃないんですよね。そうですよね」
「失礼な。俺はちゃんとした人だぞ!」
そんないつものような楽しげな空間を作っていると、背後から今までにない強烈な殺気を感じた。
ジンは恐る恐る殺気を感じた方向を見る。
「GMコマンド、本体へのダメージが命に関わるものと判断。これより原因の排除及び本体の修復を開始します」
そこには目に光のない、まるで魂を宿していないかのような印象を受ける魔神がいた。
「おいおい、ありゃまず過ぎやしねぇか?」
ジンは頰に冷や汗を垂らしながら、そう呟く。
「GMコマンド、本体へのダメージは無効とする」
「GMコマンド、原因を排除するにあたり、本体の攻撃は必殺とする」
機械のような声で魔神は淡々と言葉を並べていく。
しかし、まだジン達はプレイヤーとしてカウントされていないため、カウントされる前にジンは魔神を無力化しようと魔神の方に駆ける。
カウントされれば、魔神に対して攻撃が出来なくなる、それどころか魔神の攻撃は『必ず殺す』と書いて『必殺』だ。その時点でゲームオーバーでもおかしくはない。だからジンは全力で駆ける。
魔神まで残り15メートル。
ジンは流れるように収納魔法の中から銀色に輝く剣を取り出す。
今回の場合、まだカウントされていないので『黒刀・刻式』をつかうよりも、魔神に致命傷を与えるだけの攻撃力を持ち尚且つ、素早く振り回せる武器の方が現状では最適解だなのだ。
魔神まで残り5メートル。
あと少し、手を伸ばせば届きそうな距離。
だが、届きそうで届かない。そんなもどかしい距離。
ジンは取り出した銀の剣に魔法を施す。光属性の攻撃の威力を上げるバフと浄化の効果のある魔法。
それを持ち、ジンは最後の一歩を踏み込む。
「安らかに死ねぇぇぇぇ!!!!」
辺り一面を光が包み込む。
『13回』
その数字は今回、ジンが魔神を斬りつけた回数だ。
『0,2秒』
その数字は今回、ジンが魔神を13回斬りつけるのに必要とした時間だ。
ジンは勝ちを確信していた。
万が一は無い、そう思っていた。
しかし、現実はいつも非情で、そして涙するほどに残酷だ。
「本体の死亡を確認。これより、前回のGMコマンドに従い、本体の蘇生を開始」
「蘇生完了。同時に今回のGMコマンドも完了。プレイヤーはこの世界の生命体全てに決定」
「ゲームスタート」
魔神から発せられる信じられない言葉にジンは耳を疑った。
だが、諦める訳にはいかない。ここで止まる訳にはいかない。
ジンは必死に次の手を考える。必死に必死に。それこそ視界が回転するほどに......
ジンはそこでおかしな事に気が付く。
『視界が......回転......??』
そう思った時にはすでにジンの首は宙を舞っていた。




