次の階層はラスボスでした。その1
ネイドを先頭に次の階層に降りてみて分かったことは、ここが階層20階だった事だった。
相変わらず墓地フィールドだが、あきらかに雰囲気が違う事をネイド達は感じていた。
強者の放つプレッシャーがネイド達に伝わる。
この感覚をネイドは知っている、分岐点となる場所には必ず出現するボスの気配。
それをネイドは久しぶりに味わった。
「まさか、20階層に来てしまうとは思わなかったよ」
「本当にのぅ、レヴィやシェスカの武器では厳しいのではないか?」
「ああ、ここに来るまでに素材を集めて鍛冶屋に頼もうと計画をしていたんだけど、しょうがないからレヴィとシェスカは後方支援を頼んで中ボスのドロップアイテムに期待しようか?」
「ふむ、それしかないかのぅ。だが本当に20階のボスがでる保証がないがのぅ」
「ウズメの言うこともわかるけど、教えてくれる人はいないしね。やれる事はやっておこうよ」
「そうでもないですよネイド様、招待したわたしがご案内致します」
階段下の安全地帯でウズメとこれからの事を話し合っていたネイドの近くから前回の迷宮で聞いた声が聞こえてきた。
その声にネイド達の間に緊張感がはしる。
緋波がネイドの前に立ち声のする方に大剣を構え、シェスカとレヴィがネイドの後ろで身構える。
「おや?驚かせてしまったようですね。たいへん失礼しましたネイド様、この前
お約束したように歓迎の意を込めての招待だったのですが、おきに召さなかったですか?」
姿は見えないがその声に敵対する意志がないようなのでネイドは緋波の横に立ち謎の声に問う。
「君は誰?声は初老のように渋いけど、目的はなに?」
「目的ですか、ネイド様はご存知でしょうか。この迷宮の存在理由を?」
「ああ、少しは知っているつもりだ。が、それが本当かはわからない」
「ほう、あのもの達が話しましたか?やはり貴方は興味深い、ならばネイド様にお願いがございます。これより私と戦ってもらいます、それがこの迷宮での最後の戦いになるでしょ」
「最後とな?どういう意味じゃ?お主が40階層のラスボスなのかのぅ」
「はい、それ以上ですがウズメ様の考えも間違いではありません。私を倒せばこの迷宮は消えますので」
その言葉にネイドは驚くが疑問もうかぶ。
この魔物?は何故、会話を求めるのかがネイドには不思議だった。
「お前は何故、僕達と言葉をかわす?戦いたいのなら必要ない行動だが?」
「それが私の希望なのですよネイド様、かの者達が噂をしているのを聴いて待ちわびてましたわ、あっ!……………ましたネイド様」
何故か慌てた声を聞いてネイドは以外に若い魔物のなのかと思う。
「コホン。ネイド様、私が言いたいのは貴方の存在は我々に希望をもたらす可能性があるのです」
いきなり希望と言われネイドは初老の声の魔物の言いように驚く。
「何故?あなたは誰?」
驚きで声が出ないネイドに代わり緋波が姿の見えない魔物に問う、周りにいるネイドの仲間達も警戒を解いて魔物の声を待つ。
「誰?ですか、私は私です。この迷宮そのものですよ緋波様、あなた達は会ったでしょ他の迷宮の管理者に」
「………………そう、わかった」
「じゃな、主様よ。こやつはあの者達の同族じゃよ、どうじゃ少しは落ち着いたかのぅ?」
「あぁ、あの人達と同じなら強敵だ」
「アハハハハ、私達を人とはネイド様は変わっておられる。それ故、あの者達が貴方に託したのか………」
ネイドの言い方が可笑しかったのか、初老の声の魔物はひと笑いをして意味深な発言をした。
「託した?」
「おや?お分かりではないですか、ネイド様のお持ちになる召喚の指輪、魔銃にその身に宿る魔物を従える力。あの者達がネイド様に託したのですよ我々の悲願が達成できるように」
「?、これがそんなに重要な物だったの?アイツらはそんな事、一言もいわなかったぞ」
ネイドは自分の持つ銃を出して見つめる。
全員の視線がネイドの持つ銃に注がれるなか、魔物の声がネイドに答える。
「それはそうですよ、今回の事は私の独断ですから。あの者達も予想外でしょ、本来なら後2~3の迷宮を制覇してから貴方に接触するつもりのようですから」
「何故?主様なのじゃ?」
「それはネイド様が必ず全迷宮を廻るからですよ。貴方の夢を叶えるのに必要だと理解しているでしょから」
確かにネイドは迷宮から離れられないだろうとウズメは思うが、それだけで希望となるだろうかともウズメは思う。
「それでお主は主様に何をさせたいのじゃ?」
「………………はい、宜しいですよ」
「なにがじゃ?」
「なんでしょう?」
「緋波お姉さん、ウズメ。何か見えない幕が張られましたよ!」
「わかるのレヴィ!」
「凄いですレヴィさん」
初老の声の魔物が何かしたらしいが緋波とウズメはわからず聞くが背後からレヴィが感じた事を報告するとネイドとシェスカが感嘆の声をあげる。
「はい、これからの会話は他の者に聞かれたくないのですよ。全員が私と同じ考えではないので」
「それは聞かれればお主の命に関わる事かのぅ?」
「いいえ、私を害する事はできないですよ。身内にはね」
おかしな言い方をする魔物だとネイドは思ったが、それなら何故?隠す必要があるのか疑問がわく。
「命の危険がないの?ならば何故、隠すのかがわからないなぁ」
「この方がネイド様の危険が少ないと判断しましたゆえ」
「僕の?」
「はい、これから話す内容はそれだけでネイド様がこれからの迷宮攻略に支障があると思いますのでお許しを」
そのように言われると返す言葉がみつからない、ネイドはどうしたものかと緋波を見ると他の仲間達の困惑顔とは違い怖いくらい表情が厳しかった。
「どうしたの緋波さん、怖い顔をして?」
「べつに、なんでもありません!」
緋波してはきつい口調でネイドに言うのを見てウズメが口を開く。
「今更じゃないのか?緋波よ主様に拾われて妾達は覚悟を決めたはず、そのように主様を心配させるのは感心せんぞ」
「べつに、覚悟がゆるんだ訳ではない。年寄りは心配性でいけない。私はネイド様の行く末を思ってだな………」
緋波がウズメの言いようにムッ!として反論してウズメを見ると、ネイドに何かを耳打ちしているウズメを見てしまった。
チラリと緋波を見てネイドにくっつくウズメを見て緋波は自身が持っている大剣を頭上に振りかぶり感情のおもむくままに叩きつけようとした時、後ろからレヴィとシェスカに抱きつかれ大剣を振り下ろせずに固まる。
「きゃー!まっ待って下さい緋波お姉さん。お兄さんがいるんですよ?」
「そ、そうですよ、いくらなんでも本気はダメですよ~」
涙目で止めに入った2人に緋波は大剣を下に下げるがウズメを見る視線は先程より厳しいものとなった。
「なっ、何を怖い目をしているのだ…………別にやましい事なぞしておらんよなぁ、主様よ」
「そっ、そうだよ緋波さん、ウズメはただ緋波さんが心配で…………」
怯えが混じる2人が緋波を見て言うが、ジロリと視線を向けられると押し黙る。
ハラハラと緋波に抱きつき事の成り行きを見守る2人は緋波から力が抜けるのを感じた。
「な、なんだかわからんがすまん。余計な事を言った」
緋波から怒りの波動が消えたのを感じて謝りをいれる魔物の声。
それを聞いた緋波は何時もの表情が乏しい顔に戻り大剣をしまう。
それを見てホッとしたネイドは改めて魔物の声に向き直り、話しの続きを促した。
「それで、僕のためとは?」
「その前に、いつまでも声だけだと不便でしょうから姿を見せますゆえ、しばしお待ちを」
魔物がそう言うとネイドの前に光の壁が現れスッーと壁から何かが出てくる。
それは煙りのような感じで壁から出てネイドの前で漂うと、渦を巻いて塊になる。
光の壁が消え、煙りの塊は人の形になると閃光と共に弾けて消えた。
ネイドが眩しさから目を閉じた状態からゆっくりと目を開けると、目の前に空中を浮いている赤いドラゴンの子供がいた。
「ドラゴン?」
「ドラゴンじゃな」
「レヴィの親類?」
「違います!私の血には蜥蜴は入ってないです!」
「そう言う問題ですか?ここは驚きましょうよ皆さん」
あの声の主がドラゴンになった驚きより、ここで出て来るのがドラゴンかよ。
もろラスボスじゃんと心の中で思っているネイドと、見た目から思った事が口にでた緋波をレヴィが強い口調で訂正をするのをシェスカがあきれながら全員にツッコム。
「なんじゃ、ドラゴンの何処が悪い!これぞ最後の試練の常連じゃ!」
「…………。悪くはないがなぁ、主様よあの人の形をしたのに意味があたったのかのぅ?」
「う~ん、演出しすぎかな?」
「なにを言う、あれが最終形態じゃ!二段階変身の布石がわからんのか!」
「へぇ~、変身するんだってレヴィ」
「それは見たいです。ネイドお兄さん頑張って下さい」
もはや緊張感が薄れ気味になったネイド達を見やり、これは不味いと思ったのかドラゴンが厳かに話しだした。
「コホン!ネイド様、私がお相手致します。全力でおいでませ。力不足なら全員に死を与えますぞ」
その言葉とドラゴンが放つプレッシャーを感じてネイド達の表情も引き締まる。
その表情に満足した子ドラゴンはパタパタと翼を動かしご機嫌の様子だった。
「では、戦闘の前にネイド様達には全力でお相手をしていただきたいので、こちらから武器を用意してありますのでお使い下さい」
そう言うと子ドラゴンは、ブツブツとなにかを唱えると
空中から、武器や防具が山のように出てきてネイドの前にたまっていった。
「それで装備を整えたら戦闘開始に致しましょう」




