次の階層はラスボスでした。その2
ネイドの前に山のように積まれていくキラキラと輝く武具。
とても高級そうな武器や防具がガラクタのごとく山積みになっていく様は圧巻を通り越して、もはや呆れ顔になっていく。
いつまでも降り注ぐそれをネイドが止める。
「もう、いいよ。どれだけあるのそれ?」
「?、さぁ。わからんよ迷宮ができて入って死んだ者達の持ち物だし、数なんて数えてないわ。ガハハハハ」
「そう、それを使えと?」
「ん?、不満そうじゃの。我に挑むのに足らん者達がいくら死んでも我に関係ないわ」
「そうじゃぞ、主様よ。迷宮に挑むとはそういうものじゃ。代わりに妾達は富みや名声を得る」
そのウズメの一言がわからないネイドではないが、それでも山のように積まれている武具を見ると、多数の死者がいたことを実感する。
「でも、ろくな武具がない」
山積みになった武具を見つめていた緋波がポツリと呟き、非難めいた視線をドラゴンに向ける。
「まぁ、あれだ。力がある者は皆、無事に迷宮を脱出できるでなガハハハ。だが、一級品の武具も混じっているはずだ」
「はず?と言うのは」
「我にたどり着いた者が持っていた武具は目を見張るものがあった。まぁ返り討ちにしたが」
それを聞いて緋波がガサゴソと山積みの武具を漁る。
ネイドが止めなければ、まだ出てくる勢いだった武具は迷宮に挑んだ者の成れの果てだった物を見て一段と気を引き閉めるネイド。
「そう言えばお主は名はないのか?」
ふと思い付きウズメがドラゴンに訪ねる。
「名か?名はないぞ。創造主からは28番と呼ばれていたが、それが名になるかの?」
「28番?どう言う意味じゃそれは」
「意味とな、単純に28番目に迷宮が作られたという意味だが」
「なんじゃ、迷宮の一つ一つに名があるわけではないのかぁ、面白くないのぅ」
「ウズメの言う事は気にしないで下さい。先に勝敗を聞いてもいいですか?」
不毛な会話になりそうだったのでネイドは改めてドラゴンに勝敗の決め方を聞いてみた。
力試しと言うので命のやり取りではない方法をドラゴンがとるのかと思ったのだが。
「ん!動けなくなるまででよかろう、分かりやすいし」
「はぁ。やっぱりですか、ならばお願いがあります」
「!。なんだ、言ってみるがよい」
ニヤリと笑いドラゴンがネイドに促す。
「さっきの人の形の方で戦いたいのですが」
「なんと、アレか…………理由があるのか?」
ドラゴンに問われ頷くネイド。
「その姿より、人の形の方が戦いやすいので」
「ふむ、ネイド様が望むのならば」
そう言うと子ドラゴンから緋波位の身長の人型ドラゴンになった。
先程より表情がわかりやすく対話がしやすく感じた。
「他に望みはあるか?」
「僕はないなぁ、ウズメは?」
「妾もないぞ」
「緋波さんは武具を夢中で漁っているから置いといて、レヴィにシェスカは?」
「はひ!、ない!ないですよ!」
「あっ!、先程は蜥蜴と言ってすみません。こうして見るとまた違った感じがするです」
ネイドに振られて驚くシェスカにレヴィは落ち着いて対応する。
「あとは緋波さんだけど、皆揃ったら作戦タイムが欲しいんだけどいい?」
「構わんぞ、いくらでも時間をかけるがよい」
「あとは緋波さんだけど、皆揃ったら作戦タイムが欲しいんだけどいい?」
「構わんぞ、いくらでも時間をかけるがよい」
人型ドラゴンから許可がでたので、ネイドは皆を連れて緋波の元に向かった。
「どう?緋波さん」
「ネイド様、3級品武具しかありません。戦闘には役にたたないでしょう」
「そう、予想はしてたけどね。腕に自信がある者は自分の限界を知ってるからね」
武具の山を見つめながらネイドは当たり前のように言った。
「ふむ。なれど、使える物もあろう。ここは妾に任せてレヴィ達に戦闘指導を始めればよい。そのために時間をもらったのであろう?」
「それもそうか、ならウズメに任せてレヴィ達はまず魔法の使い方から覚えようか」
そう言うとネイドはレヴィとシェスカを目の前に座らせる。
「まずは基本からいこうか、レヴィは回復魔法が使えるから少しはわかっているとは思うが魔法は魔法カードがないと使えない。」
「はい!ネイドお兄さん。誰でもカードがあれば魔法が使えるのですか?」
「うん、使えるね。ただ使うと精神力とカードが消耗すから制限があるけどね」
「精神力はわかりますけどカードが消耗するんですか?」
「そうだよシェスカ、カードレベルが低いほど限界が早い。主にカードレベルの限界近くの魔法を使うと早く消滅する」
そうなんですかと呟きシェスカは自分の武器の鉄の爪を見つめる。
「次に魔法と言えば呪文だが、それは必要ないよ」
「へ?呪文はいらないのですか。だけどネイド様、私が読んだ本の人物は呪文を唱えてましたけど?」
と首をかしげるシェスカ。
「これは言うよりやってもらった方が早いかな、レヴィ頼む」
「はい」
ネイドの要求にレヴィが頷きシェスカが見えやすいように
魔法を使う。
静寂のなか、シェスカがレヴィの手を見つめているとレヴィの手に癒しの光が灯る。
「本当だ。レヴィちゃんが何も言わなくても魔法が使えてる」
シェスカは不思議そうにレヴィの魔法を見て言った
「見てもらったとおりに呪文は必要ない。だけど呪文ぽいのを唱えるのは、その方が集中力が増す効果がある。初めてならば言葉にした方がやりやすいから好きな言葉を言って魔法になれればいいよ」
そうネイドは説明してシェスカに魔法の使い方を教えてやってみるようにすすめる。
シェスカは魔法カードが入っている鉄の爪を水平に構え魔法を使う。
「えっと、火球!」
プスンと鉄の爪が小さく振動すると煙があがった。
「へ?………………、なんにも起きないですよ?」
自身の武器から煙だけがでるなか、シェスカは拍子抜けの表情でネイドを見る。
「あ~、ごめんシェスカ。もう1ついい忘れてたよ、使うときはイメージをしてね、できるだけリアルにね」
その言葉を聞いてシェスカは改めて武器を構え、ネイドに言われたとおりに火球をイメージして魔法を使ってみた。
「火球!」
シェスカの声と共に鉄の爪から火球がでた。
が、火球は鉄の爪の前で浮いているだけだった。
「あの~ネイド様、火球が飛ばないんですけど?」
「それはシェスカのイメージ不足だよ。火球だけじゃなくて飛んで行くイメージもしなきゃ」
「へ?……………意外と面倒くさいですね魔法って」
「まぁ、慣れだと思うよ。初心者だとよくあることだから」
「そうなんですか?、あっ!これどうしましょう?」
と、目の前に浮いている火球を指差すシェスカ。
「ちょうどいいから目標にして、火球をぶつけてみれば」
そう言われてシェスカは浮いている火球から距離をとり魔法を使うべく構えると再び魔法を使った。
勢いよく飛び出した火球が
浮いている火球に当たり爆発して消える。
「使えましたね、想像どおりでした」
「あとはいろいろ考えて魔法を使うといいよ、シェスカはレベル2の火のカードだから使えるのは火をイメージした魔法だけだから注意して」
「ならシェスカよ、このガラクタを使え。火を使うならどの程度、火力があるか知る必要があるじゃろ。カードが使用者を保護するから武器に火を纏うっても火傷はせんから安心してやるがよいわ」
ウズメが無造作にシェスカに向けて剣を投げるとその足下に10本程、剣がころがる。
「この剣を溶かすのですか?…………わかりましたやってみます」
シェスカは剣の前に腰を下ろすと1本を手に取りぶつぶつと呟いて赤く熱しられた鉄の爪を押し当てた。
それを横目にネイドはレヴィに向き直る。
「レヴィは回復魔法が使えるからシェスカのように説明はいらないよね?」
「はい!シェスカちゃんに教えるネイドお兄さんの説明でだいたい理解しました。でも私のは防具にカードをいれたので防御向きですか?」
「あまり関係ないよ、ただイメージが大事だからレヴィが防御を考えても仕方ないかな。例え具足に魔法カードを入れても攻撃魔法は使えるから、あまりカードの入れる場所にはこだわらないで」
「はい、イメージですね。私のは風のカードですか、やってみます」
レヴィは目を瞑り精神を集中すると胸の前に風が集まり渦を巻く。
「風の槍!」
レヴィの声で集まった風の力が一点に集中して地面に穴を穿つ。
「うん!いいねレヴィ。あとはシェスカのように使える限界を見極めればいいよ」
そう言うとネイドはウズメに目配せをして、シェスカにあげたように鎧をレヴィの前に投げてよこす。
それを受け取りレヴィは黙々とシェスカの様に魔法の練習をはじめた。
「これでレヴィとシェスカはいいな、緋波さんはいつも通りでいいの?」
「それなのですが、さすがにドラゴンを相手では手持ちの大剣では数が足りません。出来は良いのですが長剣では強度が足りません。ネイド様、いかがしましょうか?」
確かにドラゴンが相手ではここにいる全員の装備では対応できないと思われる。
ウズメを見ると渋い顔をしているので良い武具が見つからないのだろう、ネイドは仕方なく召喚の指環を使うことにした。
「汝の主たるネイドが命じる。名を与えし者の声に応え現れよ!」
ネイドが召喚の呪文を唱え黒い指環に力を注ぐ、すると水玉が現れたように黒い壁が現れ中からメタルチックなスライムが4匹でてきた。
「!!!!」
「はぁ、また頼むよ君達」
「なんじゃ、ため息なぞ吐いて、主様の好きな魔物だろうに」
「そうなんだけどね」
歯切れが悪いネイドにウズメは思いつく事はあるが言わずにおいた。
「ほう!それが召喚の指環か、35番もやっかいな物を託したものだ」
「35番?」
「お!知らぬか?ふむ、35番はその指環を渡した迷宮の管理者だ」
「そう、彼女は指環を強引に渡して消えたから会話はしていない」
「お~!そうじゃたな、主様の前に突然に現れて戦い勝ったら、そうそう消えおってお主から礼儀がなっとらんと言っておくとよいぞ28番よ」
「それはすまん。だが…………、まぁよいわ。それよりあとどのくらいの時間が必要だ?」
「う~ん、練習に食事、休憩をいれて、6時間後にしてくれる?」
ネイドは皆を見回し一つ一つ確認して計算をしてドラゴンに告げる。
「あい、わかった。時間になるまで我は消える。それまでに考えるが良いわ」
そう言うと人型ドラゴンはネイドの前から消える。
「あと6時間じゃな主様よ、ふふふ。楽しみじゃのぅ」
ウズメは楽しそうに微笑み、ネイドは戦う時間が決まったことで、気を引きしめた。




