深夜のお茶会
ネイドの前に姿を現したサイトーは殺気を放つわけでもなく、ただそこに立っているだけで周りの空気を重いものにしている。
静かに佇むサイトーは眼鏡の奥の瞳にネイドを写し彼の出方を待っていた。
「皆、集まって」
「なんじゃ?敵がおる前で?」
「ネイド様、動かないで下さい。傷が開きます」
「いいんですか?あの人怖いんですけど」
全員がネイドの回りに集まりサイトーに背を向けて話し合いが始まった。
ひそひそと話し合いをしているネイド達を眺めているサイトーは姿を現した事が早計であったのを感じた。
サイトーの予想では戦いになるか質問攻めにされるのをどうかわすかと思っていたのだが、自分が無視しをされるのは予想外だった。
いや、チラチラと見られている分、無視はされていないのかとも思う。
だがこうなると相手の出方を待つしかなく姿を現したのはしょうがない、しかし言葉をかわしたのが間違いだったのかと考える。
そんなどうでもいい事を考えながらサイトーはひっそりと佇む。
「よし。じゃあそういう事でお願い」
ようやく話し合いが終わったらしいネイド達がサイトーに向き直ると代表してネイドがサイトーに言う。
「サイトーさん。テーブルを用意しますのでお茶でもどうですか?」
その申し出をサイトーは怪しみながらも応じることにした。
緋波達が小屋の中から、テーブルや椅子持ち出して小屋の横の空き地に並べていく。
流石に死体の山の小屋のまえではお茶を飲むきにはならない。
ネイドは緋波達が準備をしている間にウズメに手伝ってもらい死体を埋葬した。
すべての準備が整いサイトーと向かい合わせで座り目の前のお茶を啜る。
「で、何の用ですか?サイトーさん」
「君が言いますか、私は呼ばれたので出てきたんですが」
「アハハハ、隠れて見ていたのなら、何かあるでしょ?」
「いやいや、この道は私の散歩コースで、遠くから戦闘の音が聞こえたのでツイ隠れて見ていたのですよ。ねえ、シェスカさん」
「…………」
ネイドとサイトーのやり取りを緋波達と一緒に後ろから眺めていたシェスカはサイトーがいきなり自分の名前を言ったことに驚き何も言えない。
「あれ~シェスカさん、どうして無視をするんです?私達、友達ですよね?」
お茶を飲みながらサイトーはシェスカに気安く話しかける。
「おや?うちのシェスカと友達だったんですか?サイトーさん。どちらで知り合いに?」
「あぁ~ネイド君がいる所では不味かったですかね、シェスカさんとは君が倒した紅い月という組織で知り合いまして、色々と仲良くさせてもらってますよ」
簡単にシェスカのいた組織の名を出すサイトーにネイドはウズメをチラリと見るとウズメが肯定するように頷いていた。
「へぇ~。紅い月ですか?聞いた事がない組織ですね?何処の町に行けば会えますかね、リーダーに」
「会いたいんですか?しかし……シェスカさんが隠している事を私から言うのは…………ねぇ」
思わせ振りに言うサイトーをシェスカは何も言えずに立ち尽くす、それを見てネイドはシェスカをテーブルに招く。
「シェスカ、こっちに来て一緒にお茶を飲もうよ」
「えっ、いやでも…………はい」
トボトボと歩いて来て席に着くシェスカ。
それに便乗してウズメがネイドの膝の上に座る。
「猫娘が座るなら妾も混ぜてもらうぞ。楽しくなりそうじゃ」
嬉々としてネイドの膝の上に座るウズメを緋波は羨ましいそうに見ている。
その反面シェスカはどんよりと暗い顔をしている。
「さて、いらないオマケがついちゃったけど、まだ君のリーダーだった人に連絡はつくの?」
「へぇ~ネイド君はまだ紅い月のリーダーに会いたいんだ」
「えぇ。興味があります、サイトーさんの事とかが特にね」
「………ネイド様、私は…………」
「なんじゃ?猫娘は意外に義理がたいのぅ。あれだけ利用されてるのに…………やはり餌付けの差かの?主様よもっと質の良い食事と時間が必要かもじゃ」
何かを言いたいが、言えないシェスカをウズメはからかい気味に話す。
「ねぇ、ウズメさん。シェスカさんの事を知っている素振りだけど、何を知っているか教えて欲しいな」
柔らかい口調でウズメに尋ねるサイトーだが、ネイドの目に映るサイトーは危険な感じがした。
「ほぅ。女の神秘を知りたければ………そちらも知っている事を話してもらわねばな」
涼しげな顔でウズメは逆にサイトーに問う。
「そうきましたか!いや~参りました。其処に話しを持っていかれると弱いですな」
頭をかきながら苦笑いを浮かべるサイトーがポンと手を叩く。
「そうだ。私は話せませんが、シェスカさんならいくらでも話せますよね~。どうですかシェスカさん友達を助けると思ってここは一つ」
事の成り行きを見守っていたシェスカは話しが自分に向けられたことで慌てる。
アワアワとするシェスカを見つめる4人。
どう話したらいいか思い付かないシェスカは下を向いて黙りこんだ。
「おゃ~!シェスカさんはネイドさんについたのでしょう?なら、疑われる行為は避けた方が良いんじゃないですかね」
「…………紅い月はどうでも良いけど、リーダーは売れないよ…………」
目に涙を貯めてシェスカは絞り出すように声をだした。
それを見た緋波がハンカチをシェスカに渡して2人で小屋の中に入って行った。
「女を泣かすとは非道な奴じゃな」
「全くだ。サイトーさんがそんな人間だったとは残念です」
ネイドとウズメの両方から蔑みの目で見られてサイトーは席を立つ。
「ふぅ~。どうも分が悪いようなので、退散しますよ。おやすみなさい、皆さん」
そう言うとサイトーは深夜の道を領主の屋敷のある方へと歩いていった。
サイトーが完全に姿を消したのを見て、ネイドは小屋の中の緋波達に声をかける。
「もういいですよ、出てきて下さい」
小屋の戸が開き緋波達が中から出てきた。
「ネイド様、あんな感じで良かったですか?」
「あぁ!とても良かったよシェスカ。緋波さんもありがとう」
「いえ。ネイド様のお願いですから」
「しかし、主様は趣味が悪いのぅ。あんな事をしなくとも、普通に問い詰めれば良いものを」
「あのサイトーさんを相手にするんだ、下手な対応は敵対に繋がる恐れがあるから…………今はまだね」
皆の視線が集まる中でネイドは噛み締めるように言う。
「とりあえず、後片付けをして部屋に戻ろうか。話しは戻ってからね」
そうネイドは指示をだすと緋波達がテーブルや椅子など、小屋にあった物を戻す。
小屋に借りた物を片付けてネイド達は領主の部屋に帰る。
その途中でシェスカが緋波の鞄に押し込められていたが、ネイドは仲良くなったんだと思い気にしない事にして屋敷の門をくぐる。
流石に正面の扉から入る訳にもいかず裏口に回って中に入った。
部屋に戻るとベットの端でレヴィが寝ており水玉がその下で伏せていた。
流石に起きて待っているにはレヴィには厳しい時間帯だ、緋波がレヴィを起こさないようにして抱いてベットに寝かす。
「ひとまず、シャワーでも浴びて着替えよう」
「賛成です」
「私もそれが良いと思います。せっかく買って頂いた寝間着とか見てほしいですし……えへ」
女性陣から賛同をもらい、シャワーを浴びて汚れを落とす事となり、各々がその準備をする。
そんなふうに時間を使い全員が揃う頃には太陽が昇る時間になったいた。
「はぁ~。徹夜はキツいからもう寝よう、流石に疲れたよ」
「そうですね。ですがネイド様は寝る前に傷の治療と包帯を取り替えますので、しばし起きてけていて下さい」
「ふむふむ、主様は傷の手当てをしっかりとな!妾達は寝るぞ」
そう言ってウズメがシェスカを連れて行く。
申し訳なさそうに頭を下げるシェスカにネイドは気にしないでと手を振り緋波の治療を受けた。
「緋波さん、今日はありがとう」
手当てを受けながらネイドは緋波に礼を言う。
「それが私の役目です。………それに約束ですから……」
綺麗な包帯をネイドの傷口に巻いて緋波は優しく微笑んだ。




