表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/24

初めての分配

第6話 先ほど仕留めた森狼の素材を一度ベースキャンプの小屋へと置き、僕たちはいよいよ古代遺跡の本格的な調査へと向かった。だが、いざ間近で見る遺跡は、想像以上に自然と同化していた。千六百年もの長い年月を大森林に隠されていたせいだろう。生い茂る巨木やびっしりと絡みつく蔦、何層にも堆積した腐葉土の隙間から、辛うじて灰色の石造りの壁が覗いている、という状態だった。まずはこの邪魔な草木を取り払いながら、内部へと侵入できる崩落箇所や扉を探すことから始めなければならない。メディさんとテイラーさんが周囲の魔物に警戒を払い、リーダーのガッハさんと大盾使いのハオさんが、道具を使って手際よく頑固な蔦や枝を払っていく。僕の役目は、二人が切り落とした大量の草木を邪魔にならないよう、少し離れた場所へとせっせと動かすことだ。大人たちの足手まといにならないよう、必死に手を動かした。なんだかんだで、半日ほど全員で壁の「大掃除」を続けた。けれど、要塞だった建造物はあまりにも頑強で、そう簡単には中への入り口を見せてくれない。「うーん、今日は侵入口も見つかりそうにないね。焦って無理をしてもつまらないし、ひとまず今日の調査はここまでにして町へ帰りましょう」ガッハさんが額の汗を拭いながら提案すると、みんなも「そうねぇ」「うむ、賛成だ」と同意した。使った道具をベースキャンプの小屋に片付け、昨日仕分けた森狼の毛皮や牙を僕の背負い籠へと詰め直す。森の境界線を越えて街道に出ると、張り詰めていた緊張がフッと解けた。帰りの道中は、また昨日までのようにみんなでワイワイと他愛のないお喋りを楽しみながら、カルカラの町へと向かった。ギルドの前に到着すると、ガッハさんがいつものようにずっしりとした革袋を僕の前に差し出した。「はい、カレハ君。まずは今日の分の基本報酬だ。しっかり自分の目で数えてくれるかな。……うん、よし。それからね、今日は特別なお知らせがあるんだ」ガッハさんは穏やかに微笑み、ベースキャンプから僕が運んできた森狼の素材を指さした。「今日は森狼を狩って出た戦利品があるからね、その分配をしよう。どうするかい? 初めての戦利品だから、記念に物品(現物)としてそのまま持って帰るか、特にこだわりがなければギルドで全部売り払ってから、お金として分けることもできるけれど」「えっ……!?」僕は驚きのあまり、目を丸くしてガッハさんを見上げた。「あ、あの……僕、本当に森狼の狩りには一ミリも関わっていませんし、後ろで待っていただけです! なのに、戦利品をいただいても良いんですか……?」恐縮して慌てる僕を見て、後ろで聞いていたテイラーさんが「ははっ、何言ってんだよ坊主」と笑った。「ああ、もちろん大真面目だとも。最初に契約を交わす時、説明しただろう? 『もし戦利品が出た場合、荷運び(ポーター)の係には、探索者の半分にあたる取り分の報酬を支払う』とね」そうだったっけ……? と僕は頭を捻った。あの時は緊張しすぎていて、大事な契約内容をちゃんと聞き流してしまっていたのかもしれない。プロの探索者チームは、戦う者だけでなく、後ろで荷物を守り、運ぶ者にも等しく正当な権利を与えてくれるのだ。そのフェアな扱いに、胸の奥が熱くなる。「それなら……初めての戦利品ですし、物品のままで頂いてもいいですか? 母さんや妹に、とっても良いお土産話になると思うので!」「うん、いい選択だ。きっと喜んでくれるよ」ガッハさんは優しく頷き、綺麗に鞣された森狼の毛皮と、鋭い牙を僕に分けてくれた。「それと、明日は移動の時間を節約して、遺跡の壁掃除の続きをたっぷりやるために馬車を使うからね。朝一刻前の集合だ。ゆっくり休むんだよ」「はい! ありがとうございました! 明日もよろしくお願いいたします!」四人に深々と頭を下げて解散した。帰る足取りは、昨日よりもずっと軽い。(ああ、早く帰ろう! この本物の魔物の毛皮や牙を見せたら、母さんもワカバも、一体どれだけ驚いてくれるだろう!?)自分の手で掴み取った「冒険の証」を大切に抱きしめながら、カレハは赤く染まる夕暮れの街を、満面の笑みで駆け抜けていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ