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聖王伝  作者: 日和見


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トレイン対策

聖王伝 第43話 対策機械人形の不穏な台詞はひとまず脇に置いておき、ガッハさんたちは解放された巨大な扉の奥へと足を踏み入れた。扉の先は、緩やかに地下へと続く広々とした石造りのスロープになっていた。そこを下りきると、ぽっかりと開けた平らな空間に辿り着いた。壁際には用途の分からない古代の調度品がいくつも並んでおり、その中の一つ、金属製の頑強な台座の上に、淡く輝く不思議な『宝玉』がパズルのように嵌め込まれているのが見えた。「テイラー、ハオ。まずは僕が触れてみるから、周囲の警戒を頼むよ。この手の起動スイッチにはお馴染みの罠が仕掛けられている可能性もある。……メディがいてくれたら事前に調べてもらえたのだけれど、仕方がなね」「ああ、こっちは任せな。いつでも動けるぜ」ハオさんが大盾を構えて周囲を睨み、テイラーさんが魔力を練り上げる。二人の厳重な護衛の元、ガッハさんが慎重に宝玉の上へとその大きな手のひらを重ねた。――カチリ、と静かな駆動音が響く。すると次の瞬間、天井か台座の奥からか、抑揚のない不思議な声が部屋全体に響き渡った。『――登録完了。正規ルートでの侵入を確認。現在地までの永続通行権を付与します』それ以外には、床が崩れるような不穏な変化は何も起きなかった。安全を確認したことで、テイラーさんとハオさんも順番に交代して宝玉へと触れ、それぞれの通行権を獲得していった。この平らな空間のさらに先も、暗いスロープとなって下へと伸びており、その最深部にはまた別の大きな扉がぼんやりと見えている。「どうする? このままさらに下へ進むかい?」テイラーさんの問いかけに、ガッハさんは少し考えてから首を横に振った。「いや。できれば一度戻ってメディと合流してからだね。ここから先は本当の未知の領域だ、一歩たりとも油断はしたくない」プロとしての冷徹な安全マージンを取り、三人は踵を返して再び地上へと繋がる闘技場の広場へと戻っていった。僕たちが待つ広場の入り口の扉から三人が姿を現すと、門の横に控えていた精巧な機械人形が、衣服の裾を上品に整えながら声をかけてきた。『おめでとうございます。これより先、皆様を正式な「資格者」として対応させていただきます』「おい、人形。さっきお前が言っていた制限の説明、もっと分かりやすく噛み砕いて言い直してくれ」テイラーさんが眉をひそめて尋ねると、機械人形は滑らかな動作で一礼した。『畏まりました。貴方方は今回、3名でこの試練に挑戦されました。システムに基づき、参加人数の「3」に同じ数を掛け合わせて「9」。そこに基準時間である「12」を掛けまして、算出された【108時間(4日半)】の間は、貴方方はこの闘技場での権利付与を目的とした戦闘に一切参加することができません。……過去に、圧倒的な強者が弱者を何度も連続で引き連れて強引に権利を獲得させた事例が多発したため、後年にシステムが改定された結果でございます』「なるほどな。引き上げ(トレイン)対策のロックアウト機能ってわけか」人形の分かりやすい解説を聞いて、テイラーさんたちはフムと顎を撫でた。過去の人、時代でも、現代の僕たちと同じように「強い奴に後ろからくっついて楽をして突破しよう」と考えた不届きな探索者がたくさんいたのだろう。そして、国を挙げたシステム側もそれに対抗するために、こんな意地悪な制限ルールを組み込んだのだ。「昔の人も、僕たちと全く同じようなくだらないことを考えていたんだね」ガッハさんがおかしそうにクスリと笑う。強者の三人が4日半もの間、ボス戦に出撃できなくなるという最悪のペナルティ。しかし、そんな大問題の深刻さを前にしてもなお、先輩たちは「昔の人間も同じことをしたんだ」と、どこか呑気に感心し合っているのだった。その底知れない大物ぶりに、僕はまたしてもただ圧倒されるばかりだった。

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