表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/24

初めての魔法、初めての特訓

第4話:過保護な先輩たちと、初めての特訓「よし、今日も一日、荷物持ちを精一杯頑張るぞ!」グラナード王国の青空の下、僕は心の中でぐっと気合いを入れ、昨日よりも弾むような足取りで待ち合わせの広場へと向かった。昨日の足の痛みはまだ少し残っているけれど、そんなものを吹き飛ばすくらい、今の僕はやる気に満ちあふれている。広場に到着すると、やはり今日も精霊人のテイラーさんが一番乗りでベンチに座っていた。僕の姿を見つけると、綺麗な顔を綻ばせて手を振ってくる。「おぅ坊主、おはよう! 朝ごはんはちゃんと食べたか?」「テイラーさん、おはようございます! はい、今日はバッチリ食べてきました!」昨日は朝食を奢ってもらって申し訳なかったし、今日は足手まといにならないよう、家でしっかりと母さんのスープを腹に収めてきたのだ。ドヤ顔で答える僕を見て、テイラーさんはなぜか「ちぇっ、なんだよ……」と、目に見えて残念そうな顔をした。どうやら、今日も僕に朝ご飯を奢る気満々だったらしい。その様子があまりに寂しそうだったので、僕は慌てて言葉を付け足した。「あ、でも……屋台の軽いものなら、少しだけなら入るかも、です」「本当か!? よし、坊主は本当に良い子だな!」現金なもので、テイラーさんは一瞬で満面の笑みになり、僕の首に腕を回して昨日とは違う屋台へと連れて行ってくれた。結局、香ばしく焼かれた串焼きを奢ってもらい、二人で並んでベンチで頬張る。お兄ちゃんぶるテイラーさんとの雑談は、やっぱりとても楽しかった。そうしているうちに、昨日と同じくガッハさん、ハオさん、メディさんの三人がやってきた。「お、美味そうなもん食ってんじゃねえか。俺たちも混ぜろよ」ガッハさんの言葉をきっかけに、結局全員で屋台の軽食を買い込み、五人で賑やかにお喋りをしながら朝食の時間を過ごすことになった。「さて、カレハ君。今日の予定だが、今回は森まで馬車を使って移動する。遺跡の前に長期滞在用の『探索用基地ベースキャンプ』を設営するからね。そのための資材を馬車に載せるのが、君の今日の最初の仕事だ」「はい、ガッハさん! お任せください!」リーダーの説明に元気よく返事をする。馬車の予約時間までまだ少しあるため、そのままベンチで雑談が続いた。すると、隣に座っていたメディさんが、僕の細い腕を心配そうに見つめながら、伸びやかな声で注意を促してきた。「カレハちゃ〜ん、あんまり無理をしては駄目よぅ〜。子供のうちに重すぎるものを持ったら、成長が阻害されちゃうんだからね〜」「そうだぞ、坊主。背が伸びなくなったら大変だ。ハオさんみたいにデカくなれよ」「うむ、無理は禁物だ。骨に響く」テイラーさんがからかい、大盾使いのハオさんまで深く頷く。(……いや、僕、一応お金を貰って働く『荷物持ち』として雇われているんだけどな?)あまりの過保護ぶりに内心で苦笑しつつも、大切に思われているのが伝わってきて胸の奥がじんわりと温かくなる。「もし仕事が早く終わったり、探索の合間に手が空いたりしたら、俺たちが色々と冒険のイロハを教えてあげるからね」ガッハさんのその言葉に、僕は心の中で、グラナード王国を見守る神様に深く感謝を捧げた。なんて良い人たちに巡り会えたのだろう。やがて時間になり、広場に予約していた大きな荷馬車が到着した。僕は張り切って建築資材の木材や縄を積み込み、いよいよ出発となった。ガタゴトと揺れる馬車に揺られながら、道中は何のハプニングもなく、順調に西の森の入り口へと到着した。「よし、到着だ。みんな、荷物を降ろすぞ」 やがて時間になり、広場に予約していた大きな荷馬車が到着した。僕は張り切って建築資材の木材や縄を積み込み、いよいよ出発となった。ガタゴトと揺れる馬車に揺られながら、道中は何のハプニングもなく、順調に西の森の入り口へと到着した。「よし、到着だ。みんな、荷物を降ろすぞ」街道の脇に馬車を止め、皆で手際よく資材を地面へと降ろしていく。さあ、ここからが荷物持ちの本番、気合いを入れてこの木材を担ぐぞ――そう思って身構えた僕の肩を、ガッハさんの大きな手がポンと叩いた。「カレハ君は、ここで馬車と降ろした荷物の見張りをしていてくれたまえ」「えっ……? あの、ガッハさん、僕は荷物を運ぶために雇われたのでは……?」思わず問い返すと、後ろからメディさんが僕の背中に優しく抱きついてきた。「いいのよぅ、カレハちゃん。どっちにしろ、誰か一人はここに残って周りを警戒しなきゃいけないでしょ〜? だったら力仕事は大人に任せて、カレハちゃんは見張りをよろしくね〜」結局、大人四人が手際よく資材を抱え、遺跡までの往復を三回。僕は荷物の重さに苦しむこともなく、たった一回、軽い道具箱を背負って皆の後を追うだけで、遺跡の前へとたどり着いてしまった。完全に気遣われてしまっている。しかし、遺跡の前に到着した瞬間、僕は驚きのあまり声を失った。昨日来たときには何もなかったはずの場所に、真新しい、しっかりとした石造りの簡易小屋が建っていたのだ。わずか三往復の間に、魔法で組み立ててしまったらしい。僕が目を丸くして驚いていると、テイラーさんが不敵に笑って一歩前に出た。「驚くのはまだ早いぜ、坊主。俺はこう見えても、精霊人の四大種族が一つ――『大地のバジリスク族』だからな」テイラーさんが地面に手をかざし、魔力を込めて呪文を紡ぐ。次の瞬間、ゴゴゴ……と地響きが鳴り、建物の周囲の地面から、鋭い石と土の杭がポンポンポンッ!と突き出し、小屋を囲む立派な防壁(柵)を創り出したのだ。「お、おおおっ……! すごいです、テイラーさん! 本物の魔法だ……!」「ははっ、だろ? 坊主は本当に良い反応をするなぁ!」目を輝かせて大興奮する僕の頭を、テイラーさんは嬉しそうにガシガシと撫で回す。すると、それを見ていたメディさんが唇を尖らせた。「あ〜! テイラーばっかりずるい! 私だってカレハちゃんにカッコいいところ見せたいのに〜!」そう言うなり、メディさんが後ろから再び僕にぎゅーっと抱きついてくる。狩人特有のしなやかな身体の感触と良い匂いに、僕は顔が真っ赤になりそうだった。その後、運んできたテーブルや椅子を小屋の中に並べ、臨時のベースキャンプが完成した。簡易ベッドに腰掛け、冷たい水を飲みながら、先輩たちは雑談を交えて探索に必要な知識を少しずつ教えてくれた。「言葉でどれだけ『魔物の奇襲に気をつけろ』って教えても、実際にその場になってみないと分からないことが多いからね。少しずつ覚えていけばいいよ」ガッハさんの優しい言葉に頷く。「さて、今日は移動と拠点設営でいい時間になった。今から遺跡の奥に入るには中途半端だから、今日の探索はここまでにして町へ帰ろう。……その代わり、町に着いたら少し稽古をつけてあげるな」「えっ! 稽古ですか!? はい! よろしくお願いします!」 戦闘訓練をしてもらえるなんて思いもしなかった。僕は二つ返事で快諾した。帰りの道中、昨日は『森狼』の気配に心臓をバクバクさせていた森の浅いエリアだったが、今日は本当に何事も起きず、実にあっさりとカルカラの町へと帰還した。町に戻ると、僕は皆さんに付いていって探索者組合ギルドの訓練所へと向かった。ガッハさんが受付で訓練所の使用許可を取ってくれる。本格的な戦闘訓練なんて人生で初めてだ。父さんの背中を思い出して、僕の胸は緊張と期待でドキドキと高鳴っていた。大きな木剣や割れ止めの施された藁カカシが並ぶ訓練場の中央で、ガッハさんが振り返る。「よし、それじゃあカレハ君。まずは体を痛めないように、体操ストレッチから始めよう」「はい!」ガッハさんの動きを見真似て、腕を伸ばし、腰を屈め、足を広げていく。だが――これが、想像を絶するほどにキツかった。(な、何これ……!? 筋肉が変な方向に引きちぎれそうなんだけど……っ!)大人たちの柔軟な動きとは裏腹に、僕の十二歳の身体は悲鳴を上げていた。プルプルと手足を震わせ、必死に痛みに耐える僕を見て、ガッハさんはうんうんと満足そうに頷いた。「よしよし、よく伸びているね。成長期の今、こうして関節と筋肉を柔らかくしておくことは、将来強い戦士になるために一番大切なことなんだ。もし家に帰って余裕があれば、寝る前にも自分でやっておくといいよ」「は、はいぃ……っ」息を絶え絶えにしながら返事をする。その後、木剣の持ち方や、基本となる真っ直ぐな素振りの形を教えてもらい、二時間ほどの軽い(僕にとっては激しい)特訓が終了した。全身が心地よい熱に包まれている。「よし、今日はここまで。お疲れ様、カレハ君」ギルドの訓練所を出た後、ガッハさんは「どうせなら、みんなで美味いもん食おうぜ」と、組合に併設されている食堂へと僕を連れて行ってくれた。そこで、僕の分の夕食だけでなく、紙に包まれた温かい肉料理や惣菜をいくつか買い求めて、僕に差し出 「ほら、これ。家で待っているお母さん妹さんへのお土産だ。持って行きなさい」「えっ!? そんな、お土産までいただくわけには……」「いいから受け取りなよぉ〜。カレハちゃんが頑張った証拠なんだからね」メディさんに背中を押され、ありがたくお土産を受け取る。「よし、じゃあ最後にこれな。ちゃんと毎回、自分の目で数えるんだぞ」ガッハさんから、今日もしっかりと結ばれた報酬の革袋を受け取った。「ありがとうございました! 明日もよろしくお願いいたします!」四人に深々と頭を下げ、僕は夕暮れの街へと駆け出した。筋肉痛になりかけの足は少し重いけれど、胸の中は昨日以上の充実感で満たされていた。馬車に乗って森へ行ったこと。テイラーさんの凄すぎる土魔法のこと。メディさんに抱きつかれて照れたこと。初めてギルドの訓練所で特訓をしてもらったこと。そして、手元にある家族へのおいしいお土産。(早く家に帰って、母さんとワカバに全部話さなきゃ!)たくさんの思い出とお土産を抱きしめながら、カレハは夕焼けに染まるカルカラの道を、足取り軽く家へと急ぐのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ