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聖王伝  作者: 日和見


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ルールを説明する人形

聖王伝 第39話 中央広場の手前に拠点を構えてまもなく、最初の攻略チームが慎重に広場へと足を踏み入れた。彼らが広場の中ほど、ちょうど境界線らしき場所まで至った、その時だった。それまで微動だに 動かなかった、あの衣服を纏った獣人にしか見えない機械人形が、滑らかな動作で一歩前に出た。そして、人間と全く変わらない流暢な声で、広場全体に響き渡るように語りかけてきたのだ。『侵入者の皆様、ルールを説明いたします。この闘技場の後ろにある扉に入りたくば、入る者の人数に合わせた石像ストーンゴーレムをすべて倒すか、あるいは私を倒してください。また、戦闘開始の条件は、皆様が我々に攻撃を加えるか、あるいは闘技場の半分を越えた時点でスタートとなります。……何か質問はございますか?』あまりにも理路整然とした対応に、突入した探索チームのひとりが、武器を構えたまま大声で問いかけた。「――魔法の詠唱を広場の外から、または闘技場の半分手前で唱えて発動した場合はどうなる!?」『良い質問でございます。攻撃や強化、弱体化の魔法、およびスキルの使用は、すべて我が方への敵対行動と判断させていただきます。その場合、広場の外であっても戦闘空間フィールドと見なしますので、どうぞご注意を』機械人形は慇懃無礼に一礼する。さらに別の探索者が声を張り上げた。「では、石像を倒して扉に入る資格を持つ者と、持たない者が、後から一緒に扉に入ろうとしたらどうなるんだ!?」『お答えいたします。一人でも資格を持たない者が混ざっていれば、全員に最初からやり直し(戦闘)をしていただきます。なお、戦闘の途中で資格のない者が死亡し、資格のある者だけが生き残ったとしても、戦闘は強制終了いたしません。……他に質問はございませんか?』淡々と、けれど侵入者を確実に全滅させるための冷酷なルールを押し付ける機械人形。『質問も無いようなので。……半分を越えるか、あるいはスキル若しくは魔法を使い、戦闘開始の合図を願います』最後には、くすりと優雅に微笑んで挑発までする始末だった。物陰からその様子を見ていた僕は、背筋がゾッとするほどの恐怖を覚えていた。(……嘘だろ。本当に、あれがただの人形なの!?)見た目だけでなく、思考も、言葉の裏にある悪意すらも、本物の人間……いや、知性の高い狐の獣人族そのものじゃないか。千六百年前に滅んだ『ヴルペリア』の狂った魔法科学の真髄を前に、広場の手前は、押し潰されそうなほどの静寂と緊張感に支配されるのだった。

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