広場の手前で情報収集
聖王伝 第38話 前線基地と、黒鷹の翼の流儀王国軍から「三日間」という明確なタイムリミットを突きつけられたことで、探索基地の空気は一変した。焦る各探索チームだったけれど、さすがにあの4メートル超えのストーンゴーレムと、本物の獣人にしか見えないという精巧な機械人形の二枚看板は手強すぎる。そこで全チームが持っている情報を共有し、話し合いの末、合意できたところから連携して広場を攻略していく方針が固まった。その中で、僕たち『黒鷹の翼』が下した決断は、少し意外なものだった。昨日の戦いぶりを見ていた各チームから、ガッハさんの規格外の回復魔法(神聖魔法)を頼りにする声が殺到したのだ。それに応える形で、僕たちはあえて中央の広場には突入せず、その手前の安全な通路に陣取ることを決めた。ここを臨時の後方支援拠点とし、怪我人の治療を行いながら、攻略チームからの最新情報を収集する。もちろん、タダで人助けをするわけではない。ガッハさんが教会を辞めた理由である「法外な喜捨」は要求しないけれど、プロの技術に対する正当な対価(治療費)はきっちりと頂く契約だ。「よし、僕たちの場所はここで確保できたね」ガッハさんがそう言うと、この拠点には王国軍の兵士たちも数名合流してきた。彼らも前線からの生きた情報を欲していたのだ。これで、もし拠点が襲われるような危険があれば、軍と協力して迎撃するという強力な防衛体制も出来上がった。「さあ、みんな行こうか。広場の中に入らないからといって、ここが危険な場所に変わりはない。油断せず、だけどあまり緊張しすぎるなよ」ガッハさんが穏やかに皆の背中を押す。「はーい! 私の【気配察知】と観察力で、広場の奥の動きまで丸裸にしてあげるわよ〜!」メディさんが頼もしく胸を叩いた。今日は彼女の鋭い目と耳が、チームの最大の武器になる。拠点の設営道具や、治療用の物資を台車から素早く運び出す。昨日のように、自分たちの手で直接お宝をザクザクと掘り出すような派手な戦果は期待できないかもしれない。けれど、他の熟練チームが命がけで挑む「広場のボス」とは一体どれほどの存在なのだろうか。恐怖よりも、本物の強者たちの戦いを間近で見られるという期待に、僕の心はドクドクと静かに踊っていた。先輩たちの指示をいつでも受けられるよう、僕は宿舎の天幕を組み立てながら、中央広場から響いてくるであろう地鳴りのような戦闘の始まりをじっと待ち受けるのだった。




