朝から物騒な情報
聖王伝 第37話 泊まり込み探索の一日目の夜。僕たち『黒鷹の翼』は、夕食を済ませると早々に割り振られた宿舎の天幕で就寝することになった。けれど、周囲の様子は違っていた。集まった探索者チームの約半分は、夜になっても目をギラギラと輝かせたまま、休むことなく遺跡の奥へと入っていくのだ。何でも、まだ誰も辿り着いていない未開の部屋には、信じられないようなお宝が眠っているはずだ、と息巻いているらしい。そんな周囲の焦りを余目に、リーダーのガッハさんは涼しい顔で僕たちに言った。「カレハ君、これから長丁場になるからね。最初から飛ばしすぎては体が持たないよ。遺跡探索において、焦りは最大の禁物さ」テイラーさんもメディさんもハオさんも、全く動じることなく「当然だ」という顔で頷いている。これが、数々の難関を乗り越えてきた高名な探索チームの「余裕」というものなのだろうか。僕はプロの流儀の一端を見た気がして、深く感服しながら泥のように眠りについた。王国軍の兵士たちも十三時間ごとに交代しながら、二十四時間体制で僕たちの後方支援を受け持ってくれるという。これほど心強いことはなかった。◇翌朝。僕はいつも通り、朝ごはんの前に少し走り込みをして、入念に終わりの体操をこなした。メンバー全員で温かい朝食を囲みながら、まずは昨日の夜通しで探索を続けていた他のチームの状況確認を行う。集まってきた最新の情報によると、遺跡の構造が徐々に明らかになってきているようだった。まず、左右の通路の奥から、それぞれ上の階層へと上がることができる「階段」が見つかった。そして、僕たちが昨日進んでいた中央通路の先には広大な「広場」があり、その広場の最奥には、巨大な「扉」が存在しているのだという。ただし、中央の広場を攻略するのは一筋縄ではいかない。そこには、目を疑うほど凶悪な「門番」が立ち塞がっているらしいのだ。それは自律行動する機械人形なのだが、これまでに見た機械人形とは一線を画し、一見すると本物の獣人に見えるほど精巧な造りで、なんと衣服まで身に纏っているという。その強さは、夜間に突入したチームを返り討ちにするほど苛烈で、本物の脅威として恐れられていた。さらに、その広場に鎮座している巨大な石像までもが、侵入者に反応して動き出すのだという。「――【ストーンゴーレム】だね。広場の天井が異様に高いと思ったら、あの巨体を暴れさせるための空間だったわけだ」ガッハさんが台帳の記録を見ながら眉をひそめる。事態を重く見た王国軍の責任者は、各探索者リーダーを集めて厳しい条件を突きつけていた。「我々王国軍も、ただ待っているわけにはいかない。今日から三日間の期限を設ける。もし探索者だけで中央の広場を攻略できなければ、それ以降は軍が直接介入し、力ずくで突破させてもらう」軍が介入すれば、出土する遺物の主導権や報酬の配分は大幅に削られてしまうだろう。朝の探索基地は、これからどう動くべきかの激しい議論で熱く揺れていた。危険を冒してでも、最高のロマンとリターンがある中央の広場へ突入し、精巧な機械人形と巨大なストーンゴーレムに挑むべきか。それとも、危険度は未知数だが、左右の通路の先をじっくりと開拓していくべきか。あるいは、一度一階層の奥を諦めて、見つかった階段から上の階層へと進むべきか。「さあ、僕たちはどうしようか」ガッハさんが僕たちを見つめ、不敵に微笑む。運命を分ける三つの選択肢を前に、僕の胸は朝からドクドクと緊張で高鳴り始めていた。




