発展した探索基地
聖王伝 第32話 「では、お母様、ワカバ、行ってきます! 泊まり込みになりますが、精一杯、全力で頑張ってきます!」今日からはいよいよ本格的な遺跡内部の探索が始まる。僕はただの荷物持ちだけれど、家族を支えるため、そして黒鷹の翼の皆さんたちの期待に応えるため、力強く決意表明をして我が家を飛び出した。いつもの場所で「黒鷹の翼」の皆さんと合流し、温かい朝ごはんを頬張りながら最終的な打ち合わせを済ませる。今回もルダール子爵家が用意してくれた馬車で現地へ向かうことになった。今回は僕たちだけでなく、子爵家お抱えの鑑定士や他の家臣の方々も同行するため、贅沢にも2台の馬車が連なっての移動だ。驚いたことに、昨日までのわずかな時間で森から探索基地までの道路が綺麗に整備されており、なんと基地の目の前まで直接馬車で乗り入れることができた。領主様の底力というか、働く職人たちの仕事の早さには本当に恐れ入る。馬車を降りて割り振られた建物へ荷物を運び込む際、僕は思わず周囲を見渡して圧倒されてしまった。テイラーさんが大魔法で作り上げた、あの高さ5メートルを超える強固な土の防壁。その内側には、いつの間にか木造の立派な臨時宿舎や倉庫がいくつも立ち並び、まるで小さな要塞都市のようになっていたのだ。「フッ、俺が次の日に、朝から晩までこき使われた成果だぜ」テイラーさんがニカッと笑って胸を張る。すかさず隣にいた子爵家の家臣の方が、深く頭を下げた。「テイラー様には本当に尽力していただき、感謝の念に堪えません」「気にするな、仕事だからな」テイラーさんは不敵に笑って受け流していたけれど、彼がどれほど無茶をしてこの基地の土台を作り上げてくれたのかがよく分かり、胸が熱くなった。現在、この探索基地に集まっている戦力は想像を絶する規模だった。王都から派遣された王国軍が約200名。そのうちの60名が交代で遺跡内部へと入り、僕たち探索者が先行して切り開いた安全なエリアに、臨時の防衛陣地や後方支援拠点を構築してくれる手筈になっている。さらに、王国が公募で雇い入れた熟練の探索者チームが10チーム。荷物持ちも含めれば約100名ものプロがひしめき合っている。僕たち『黒鷹の翼』は僕を入れて5名だ。そして、基地の周囲や大森林の警備・整備にあたるため、王国お抱えの傭兵の方々が約200名も配備されていた。カルカラの町が丸ごと引っ越してきたかのような、凄まじい熱気と緊張感が辺りを支配している。遺跡の入り口前では、王国から派遣された総責任者、子爵家の責任者、そして各探索者チームのリーダーたちが円陣を組み、最終的な探索手順についての協議が行われていた。「出土した成果物は、内部に構築される王国軍の陣地まで持ち帰れば、国が責任を持って一時預かりの管理を行う」という方針が確認され、いよいよ全ての準備が整った。「――さあ、みんな、行こうか」ガッハさんが穏やかな、けれど芯の通った声で僕たちに合流を促す。ハオさんが大盾を構え、メディさんが鋭い視線を闇へと向け、テイラーさんの周囲に微かな魔力の風が舞う。僕は背負った道具箱の紐を強く握り締め、先輩たちの背中を追って、遺跡の中へ。




