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聖王伝  作者: 日和見


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コイン遊び

聖王伝 第30話 「お兄ちゃん、みんなによろしくね! ワカバのお願いだよ!」「うん、ちゃんと一番に伝えるからね」今日からはいつ呼び出しがあってもいいように、即応体制での待機期間に入る。そのため、ワカバはお留守番だ。寂しそうにする妹の頭を優しく撫でて約束を交わし、僕は装備を整えた。「お母様、では行ってきます!」「気をつけてね、カレハ。しっかりお仕事に励むのよ」母さんの見送りを受け、僕は一人でいつもの待ち合わせ場所へと向かった。広場に到着すると、すでに「黒鷹の翼」のメンバーが全員揃っていた。テイラーさんも今朝は現場へ行かず、こちらに合流している。「皆さん、おはようございます! ……あの、ワカバがみんなによろしくって言っていました!」「あら〜! ワカバちゃん、お留守番なのね。寂しいわぁ〜!」メディさんが大袈裟に肩を落とすのを横目に、ガッハさんが「おはよう、カレハ君。じゃあ、まずは朝ごはんを食べながら、今日からの動きを説明しようか」と温かいパンを分けてくれた。今日からは探索者組合ギルドの建物内で待機する。ただし、ただじっと座っているだけでは退屈してしまうため、ガッハさんから「暇を潰せるように、テーブルでできるちょっとした『遊び』をしようか」と提案された。一体どんなことをするんだろうと気になったけれど、ギルドに入ればすぐに分かると言われ、僕たちは連れ立って建物の中へ入った。ギルドに少し広めの個室の使用料を払い、部屋を借りて待機が始まる。さあ、どんな暇潰しが始まるのかと僕が身構えていると、ガッハさんがテーブルの上に大量のコインを適当な山にしてジャラジャラと積み上げた。「ルールは簡単だよ。順番にコインを山から一枚ずつ引き抜いていって、チャリンと音を立ててしまったら負けだ」やってみると、これが想像を絶する難しさだった。指先の繊細なコントロールでコインを引き抜く技術はもちろんのこと、山の形状を見て「どれを引けば崩れずに安全か?」を見極める観察力、さらには「どれを引けば、次の人の番で山を崩しやすく(難しく)できるか?」という意地悪な駆け引きや状況判断まで求められるのだ。「ほう、坊主、そこを狙うか。だが甘いな」「あ〜〜! テイラー、今ずるい引き方したでしょ〜!」ただの子供の遊びかと思いきや、プロの探索者たち全員が完全にマジな目になって頭脳戦を繰り広げている。僕も負けじと必死に頭を使い、真剣にコインを睨みつけていたら、あっという間にお昼の時間を迎えてしまった。部屋を出る際、ギルドの職員さんに「お昼ご飯のために1時間ほど席を外します」と声をかけ、みんなで外へ出る。いつ呼び出しがかかるか分からない待機中のため、今日のご飯は近くの簡素な食堂で素早く済ませ、すぐに小走りで部屋へと戻った。すると、僕たちが留守にしていた短い間に、ルダール子爵閣下の配下の方が部屋の前で待っていた。「黒鷹の翼の皆様、お戻りをお待ちしておりました。……これより、あと2時間ほどで子爵閣下がこちらへ到着いたします。どうかよろしくお願いいたします」国家の大きな決定が下ってから、ついに領主様が動くのだ。その報告を受け、部屋の中の空気が一気に引き締まった。それから1時間と少々が過ぎた頃、窓の外の大通りに、以前乗せてもらったあの二頭立ての豪華な馬車が静かに滑り込んできた。馬車から降り立ったルダール子爵は、お供を引き連れ、ギルドの階段を上がってくる。今回は2階の豪華な応接室ではなく、僕たちが待機しているこの少し広めの貸し部屋へ、子爵自らが直接入ってきた。バタン、と重い木製の扉が閉まり、お供の兵士たちが部屋の四方を固める。いよいよ、国の決定を受けたルダール子爵との打ち合わせが始まる。

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