表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/41

特訓の終わり

聖王伝 第29話 特訓の終わり初スキル獲得の記念を兼ねた美味しい昼食をお腹いっぱい食べたあと、午後の時間はいつもと少し趣向が変わった。ガッハさんが昨日用意してくれた黒板とチョークを取り出し、訓練所の一角で「座学」が始まったのだ。「よし、ワカバちゃんはまず文字の読み書きの練習をしようね。カレハ君には、探索者として生きていくために必要な、少し難しい専門単語や『契約』の仕組みについて解説するよ」ガッハさんは黒板に流暢な文字を書きながら、真剣な目付きで僕に向き直った。「基本的には探索者組合ギルドの職員に任せておけば安全だ。組合が正式に依頼を受けて、僕たち探索者に仕事を回してくれる場合はね。……だけど、組合を仲介するだけで、依頼主から直接個人の指名として仕事を受けるときには、書類の細部まで自分自身の目でしっかりと確認しなければいけないんだ」ガッハさんの熱のこもった講義は、僕の知らない重要なことばかりだった。もし契約書の意味が理解できなければ、その依頼の労働力と成果が本当に釣り合っているのか、失敗したときのリスクや損失はどれほどか、成功したときの報酬の条件が正当か、といった判断が自分で全く下せなくなってしまう。「勉強しただけでは難しいからね。まずは知識を持ったうえで、これからの依頼で経験を積んでいくしかない。戦うだけが探索者じゃないんだよ。こういう事務仕事も最低限できなければ、悪い大人に良いように使い潰されてしまうからね」探索者になれる十五歳まで、あと三年。それまでに剣や格闘の技術だけでなく、こういった難しい契約の事務手続きも頭に叩き込まなければならない。覚えることが山積みで気が遠くなりそうだったけれど、僕がやるしかないのだ。「黒鷹の翼」の皆さんみたいに、ただの荷物持ちの僕を対等に扱い、丁寧に勉強を教えて鍛えてくれる。こんな素晴らしいチャンスは二度とない。絶対に無駄にしてなるものかと、僕は必死に黒板の文字をノートに書き写した。やがて時間が静かに流れ、充実した五日間の特訓の終わりを告げる時間がやってきた。「ガッハさん、皆さん。この五日間、僕のために付きっきりでご指導いただき、本当にありがとうございました!」「ありがとうございました!」僕とワカバが並んで深く頭を下げると、先輩たちはみんな「よく頑張ったね」「お疲れ様、カレハ君」と優しく微笑んで返礼してくれた。今日はリーダーのガッハさんが、僕たちを家まで送ってくれることになった。その横では、メディさんがワカバの服の裾を掴んだまま、この世の終わりのような顔で床をごろごろと悶えている。「あ〜〜ん! ワカバちゃんと離れたくないよぉ〜〜! 明日からワカバちゃんロスで死んじゃう〜〜!」「あはは……メディさん、もし良ければ、暇なときはいつでも僕たちの家に遊びに来てください。母さんもきっと喜びますから」僕が苦笑しながらそう伝えると、メディさんはガタッと飛び起きて目を輝かせた。「本当!? 本当に突撃しちゃっていいのね!? やったぁーーー!!」ワカバも「わーい! メディお姉ちゃん、お家に来てね!」と大喜びしている。「やれやれ、メディ、あんまりカレハ君の家で迷惑をかけるんじゃないよ。……さあ、僕たちも帰ろうか」ガッハさんが優しく促し、僕たちは三人でしっかりと手を繋いで、夕暮れに染まるカルカラの町の帰路についた。明日からは、いつルダール子爵からの呼び出しや国軍の動きがあってもいいように、即応できる状態での「待機期間」へと移行する。短くも濃密だった五日間の特訓。体には確かな戦闘スキルが宿り、頭には新しい知識が詰まっている。僕は、始まったばかりの自分の大きな成長を噛み締めながら、一歩一歩、我が家へと歩みを進めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ