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聖王伝  作者: 日和見


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はじめてのスキル

聖王伝 第28話 「よし、明日からはいつ依頼が来てもいいように、訓練所を離れて待機することになる。だから、こうして連日みっちりと特訓ができるのは今日が最後だ。カレハ君、気合いを入れていこう!」ガッハさんの言葉に、僕は「はい!」と力強く返事をした。最終日の午前は、これまで通りの格闘術の特訓から始まった。けれど、今日の内容はいつもと違っていた。今まではガッハさんにただ転がされるだけだったけれど、今日は「教えられた基本の動作を、何度も連続して行って体に覚えさせる」という地道な反復練習だ。体に覚えさせる、とはどういう感覚なのだろう。不思議に思いながらも、僕は言われた通りのステップや掌底の軌道を愚直に繰り返した。けれど、少しでも軸がぶれたり、おかしな力が入ったりするたびに、ガッハさんから鋭い指摘が飛ぶ。その都度、目の前で見事な見本を見せてもらい、自分の動きを少しずつ改善していった。「カレハ君、正しい動作で行わなければ、相手に効果的な一撃を与えられないどころか、自分の体を痛めてしまうのだよ。格闘とは、全身の力を効率よく拳に伝える技術なんだ」難しいな、と僕は額の汗を拭った。ただ闇雲に殴るだけではダメなのだ。ふと横を見ると、僕の隣でワカバも一緒になって小さな手を突き出し、「ウンショ、ウンショ」と真似をして動いていた。必死な姿がたまらなく可愛いけれど、メディさんが悶絶しているのを知っていてやっている気がする。あざといぞ、ワカバ。地味で地道な反復練習は、想像以上に体力を削っていく。適度に休憩を挟みながら、僕は教えられた基本動作を何度も、何度も体に染み込ませるように繰り返した。――その時だった。いつも通りに踏み込み、鋭くパンチを放った瞬間、明確に「何かが違う」と感じた。「……え?」もう一度、同じようにステップを踏み、同じ軌道で拳を突き出してみる。足の裏から腰、背中、そして拳へと、一本の細い糸がピシリと繋がったような奇妙な感覚。バラバラだった僕の動きが、一瞬で一つの綺麗な形にまとまった。忘れないうちに、と僕はその感覚を掴んだまま、ひたすらその動作を繰り返し続けた。すると、それを見ていたメディさんがパッと顔を輝かせて声をかけてきた。「カレハちゃん、おめでとう〜! 今の動き、合格よ! ……たぶん、スキルが生えたわよ!」「えっ……!? スキルが……ですか?」こんな短期間で、まさか自分が特別な技術を授かれるなんて思わなかった。驚いてガッハさんを見ると、彼も自分のことのように嬉しそうに深く頷いてくれた。「うん、間違いない。カレハ君の体に今、神の恩寵が付いたよ。よし、一旦訓練を止めて、正式に確認しに行こうか」僕たちは確認のために、探索者組合ギルドの内部に併設されている、戦神に仕える司教様の元へと向かった。本来ならスキルの鑑定にはそれなりの費用がかかるのだけれど、ガッハさんたちが「お祝いだからね」とチームの財布から快く全額を出してくれた。厳かな祭壇の前で司教様が祈りを捧げ、神のシステムを閲覧する。吐き出された僕のステータスには、はっきりとこう刻まれていた。【名前】カレハ(12歳)【職業】探索者(普通)【技能】初期格闘術・拳技(ランク1 / レベル1)【その他】なし「間違いなく、スキルが付いているよ。おめでとう、カレハ君」司教様の言葉を聞いて、僕は手のひらを強く握りしめた。騎士だった父さんのように、僕も一歩、戦う者としてのスタートラインに立てたのだ。「お兄ちゃんすごーいっ!」と飛びついてくるワカバを抱きしめ、先輩たちも我がことのように僕の肩を叩いて祝福してくれた。「よし! カレハ君の初スキル取得のお祝いも兼ねて、今日のお昼ご飯はとびきり美味しいものを食べに行こう!」ガッハさんの音頭で、僕たちは歓声を上げながらギルドを後にした。最高の形で特訓期間を締めくくった僕は、誇らしさと心地よい達成感に胸を満たしながら、お祝いのランチへと歩みを進めるのだった

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