少しは体力がついたかな?
聖王伝 第21話 家に帰るなり、僕はポケットからずっしりと重い革袋を取り出し、テーブルの上でお母様に手渡した。「お母様、今日の分の報酬を頂いたよ」「ありがとう、カレハ……って、あら!?」袋を受け取ったお母様は、中身を確認するなり目を丸くして、その場にオロオロと取り乱し始めてしまった。「か、カレハ……これ、いくらなんでも多すぎるわよ。ただ隣で見学させてもらっただけなのに、こんなにも頂いて本当に本当によろしいの!?」「うん、僕も最初はびっくりして断ろうとしたんだ。でもテイラーさんが『最初の契約通りだから受け取っとけ』って。ガッハさんたちもみんな笑顔で受け取れって言ってくれたんだよ」僕が必死に現場でのやり取りを説明したものの、お母様はまだどこか納得がいかない様子で、申し訳なさそうに眉を下げて溜息を吐いていた。実直に生きてきた僕たち家族にとって、一日でこれほどの大金を手にするのは、どこか現実味がなくて怖いことでもあったのだ。ただ、僕自身の心と体には、確実に良い変化が起き始めていた。いつもならガッハさんにボコボコにされて大の字になっている時間なのに、今日は午前中に魔法の見学をしていたせいか、まだまだ体力が有り余っているのを感じていた。「お母様、晩御飯の前に、少し家の周りを走り込んできてもいいですか?」「えっ? ええ、構わないけれど……」僕がそう告げると、すかさずワカバが僕の服の裾を引っ張った。「お兄ちゃん、ワカバも行く! 一緒に走る!」「よし、じゃあ二人で少しだけ走ろうか」すっかり日課になった朝晩の運動。夕暮れの涼しい風を浴びながら、僕とワカバは家の周辺を軽く走り込み、最後に入念な終わりの体操をしてから家へと戻った。運動に体が慣れてきたせいだろうか。最近はとにかくお腹が空くし、何を食べても美味しくて、ご飯がものすごい勢いで進んでいく。以前よりもずっと健康的に、そして逞しく育っている実感が内側から湧き上がってくる。食べ終わった後は、テーブルを囲んでお母様と色々と話し合いをした。今日頂いた大金をどうするべきか、これからの僕たちの暮らしにどう役立てていくべきか。真剣に、けれど未来に希望が持てる前向きな話し合いを重ねることができた。夜が更けると、いつものように家族みんなで温かいお湯を使い、お互いの体をタオルで丁寧に拭き合った。「お兄ちゃん、明日もワカバ応援するからね」「ありがとう、ワカバ。おやすみ」ベッドに横になり、妹の小さな寝息を聞きながら僕もゆっくりと目を閉じた。明日は5日間の休息日の3日目。つまり、チームの皆さんとの特訓もいよいよ中盤戦だ。頂いた多すぎる報酬に恥じないよう、明日からはもっともっと泥まみれになって強くなってやる。カレハはそんな決意を胸に、静かな眠りへと落ちていくのだった。




