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聖王伝  作者: 日和見


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土の精霊魔法

聖王伝 第19話 昨日まで僕たちが草木を退かしていた探索基地ベースキャンプに到着すると、そこはすでに戦場のような忙しさだった。ルダール子爵の職人たちが、設計図らしき図面を片手に次々と地面に杭を打ち込み、その杭同士を太い縄で結んでいく。そうして基地を囲むように広大な区画が縄で繋がれると、責任者の一人がテイラーさんの元へやってきて、図面を見せながら最後の打ち合わせを始めた。「よし、話がまとまったぞ。坊主、嬢ちゃん! 今からあっちからそっちまで、地面をパッパッと掘り下げて固定する魔法を使うからな。特等席で見てな」テイラーさんに呼ばれ、僕とワカバは胸を躍らせながら彼のすぐ隣へと陣取った。「よし、行くぜ」テイラーさんが不敵に笑った、その次の瞬間だった。彼は呪文を唱えるどころか、身じろぎ一つしなかった。それなのに、縄で区切られた地面が、まるで最初からそうであったかのように、一瞬で、そして静かに1メートルほどスッと沈み込んだのだ。「おおおおっ……!」「テイラーお兄ちゃん、すごーいっ!」僕とワカバは同時に歓声を上げた。テイラーさんはどこか満足げに鼻を鳴らす。「次は固定化だな」今度は小さな声でブツブツと短い詠唱を唱え、沈み込ませた地面に魔力を通していく。僕の目には見た目の変化は分からなかったけれど、泥だった地面が瞬時に強固な岩盤のように固まったらしい。幅2メートル、深さ1メートルの細長い溝。それが基地の周囲をぐるりと囲むように、およそ500メートル四方の正方形を描いていた。これだけでも、人間が手作業でやれば何日かかるか分からない大仕事だ。テイラーさんは再び責任者の方と短く言葉を交わす。そして、その後に続いた光景は、まさに圧巻の一言だった。テイラーさんが朗々と力強い詠唱を紡ぎ、最後にバシッと格好いい決めゼリフを放つ。ドゴゴゴゴ……! と、大地を揺るがす地鳴りが響いた。先ほど掘り下げた溝からわずかに外側の地面が、恐ろしい勢いで隆起し始めたのだ。幅2メートル、高さはゆうに5メートルを超える強固な土の防壁。それが、ものの10秒足らずの間に、そびえ立ったのだ。「す、凄すぎる……!!」「かっこいいーーーっ!!」僕もワカバも大興奮で跳びはねた。これが、国で指折りの実力を持つ【エレメンタルマスター】の本物の魔法だ。四方の壁をすべて出現させ、仕上げにがっちりと固定化の魔力を施すと、テイラーさんは額の汗を拭った。「ふぅ……。あー、魔力が3割を切ったから、俺の魔法はここまでだな」責任者にそう告げると、テイラーさんは壁に一箇所だけ作った出入り口(扉)の周りを崩れないように補強し、全員で休憩に入った。休憩中、ガッハさんと責任者さんたちが「やはり土の精霊魔法使いは、金貨をいくら積み上げてでも依頼する価値があるな」としみじみと話していた。なるほど、これだけの城壁を一瞬で作れるのなら、国や貴族が大金を払ってでも魔法使いを雇いたがるわけだ。まだ午前中だったけれど、テイラーさんの魔力が切れたため、僕たち「黒鷹の翼」は町に帰ることになった。子爵の職人や兵士の方々は、テイラーさんが作った壁の内側で、夕方まで施設やテントの設営作業を続けるらしい。チームの皆さんと一緒に森を出て、再び豪華な馬車に乗り込む。帰りもメディさんは「ワカバちゃんたちとお喋りできない〜!」と不満げに御者台へ登っていった。何事もなく、お昼前には住み慣れたカルカラの町に到着した。午後からはギルドに戻って僕の特訓の続きだ。「よし、カレハ、ワカバちゃん。今日の昼飯は、俺の隠れたおすすめの店に案内してやる」無骨なハオさんがそう言って僕たちの前に立った。午前中にテイラーさんの凄まじい大魔法を見て、心も体もすっかりやる気モードになっている。美味しいご飯をお腹いっぱい食べて、午後からの訓練も全力で頑張るぞ!

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