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聖王伝  作者: 日和見


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グラナード王

聖王伝 第14話 グラナード王国の中心、王都。その深奥にある玉座の間にて、現国王はルダール子爵から届いた緊急の進捗報告書を読み終え、小さく鼻を鳴らした。「ルダールめ、また面倒な案件を持ち込みおって……」苦々しく呟いたものの、その内容を無視するわけにはいかなかった。国王は即座に重臣たちを招集し、緊急会議の場で書面を突きつけた。「ルダール子爵より、急使による報告があった。我が国南部の町カルカラから、西の大森林へ3キロほど足を踏み入れた地に、これまで未発見であった施設を発見したとのことだ」その言葉に、重臣たちの間に一気に緊張が走る。国王は冷徹な視線を見据えたまま、具体的な対応策の協議を命じた。もし、その未発見の遺跡が「魔境」――つまり、内に夥しい魔物を飼い慣らしたままの危険地帯であった場合、最悪の事態として近隣の領地が壊滅する恐れもある。国家の安全保障を最優先とし、まずは万が一に備えて「国軍の派遣」が即座に決定された。しかし、この事態は最悪のリスクを孕むと同時に、国家にとって最高の恩恵をもたらす可能性もあった。もし施設の内部が手つかずのまま眠っているのであれば、そこは千六百年前に失われた失伝技術ロストテクノロジーの宝庫だ。現代の職人では到底製造できない強力な魔導武具や、古代の有用な道具を大量に獲得できるかもしれない。「施設を本格的に調査・発掘するため、広く国内の熟練探索者を募れ。また、現地の警備や周辺の魔物間引きのために、傭兵組合ギルドへも大規模な発注を出せ」国王の矢継ぎ早な指示に、大臣たちは必死に羊皮紙へペンを走らせる。「それから……あの土地はごく最近まで、ムサーダ男爵家が領有していた係争地だ。後々の火種を消すためにも、男爵にはこちらから事前に話を通しておかねばならん」最低限にして的確な方針を全て指示し終えると、国王は「あとは法と前例に則り、良いように計らうが良い」と言い残し、さっさと会議の間から退出していった。残された大臣や将軍たちは、国王が示した大枠をベースに、より具体的な人員配置や予算、輸送経路の策定へと取りかかる。こうして、国家のトップによる僅かな時間の合議により、グラナード王国という巨大な組織が、カルカラの町を目指して慌ただしく一斉に動き出すこととなった。◇――翌日。王都へ急使を飛ばし、固唾をのんで返を待っていたルダール子爵エスカリフの元へ、早くも国王からの返答と指示書が届けられた。国軍の出動、傭兵の動員、そして探索者の公募。国家規模の大規模なプロジェクトへと発展したその規模に、子爵は自身の思惑通りだと小さく口元を歪めた。「よし、直ちにカルカラの町へ向かうぞ」子爵は即座に馬車の準備を命じた。王国が動き出した以上、自分に与えられた猶予は極めて短い。「黒鷹の翼」のメンバーたちに与えた十日間の待機契約。彼らが休息を終えるまでの間に、西の森の探索基地ベースキャンプの大規模な拡充工事を完了させ、国軍や他の探索者が到着した瞬間に、すぐさま次の行動へ移れるようにしておかなければならない。長年、血を洗う領地争いに喘いでいた最果ての町カルカラ。未発見の施設の発見は、いまやグラナード王国全体を巻き込む、巨大な嵐の渦中心へと変貌しつつあった。

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