エッフェル塔と夜景スケッチの回
フランス研修旅行。
5日目。
パリの夕方。
美術科二年生の研修も終盤。
今日は特別な予定が入っていた。
エッフェル塔の夜景スケッチ。
「昼間とは全然違うね」
華子が言う。
夕暮れのパリ。
空の色が少しずつ変わっていく。
遠くに見えるエッフェル塔。
歩美は立ち止まった。
「すごい……」
エッフェル塔はパリを代表する建造物で、夜にはライトアップされた姿を見ることができる。
先生が言う。
「今日は光と影を意識して描いてみましょう」
美術科らしい課題だった。
生徒たちはそれぞれ場所を決める。
歩美と華子は少し離れた場所へ。
スケッチブックを開く。
昼間の街とは違う。
建物の輪郭。
街灯の光。
水面に映る明かり。
夜のパリは、
別の表情を見せていた。
「夜景って難しいね」
華子が言う。
「暗いだけじゃないんだね」
歩美は鉛筆を動かす。
明るい場所。
影になる場所。
光が当たる部分。
少しずつ描き込んでいく。
「完成!」
華子がスケッチを見る。
「エッフェル塔だけじゃなくて、周りの空気も描いてる」
「見た時の感じを残したかった」
歩美らしい答えだった。
その時。
エッフェル塔がきらめく。
「わあ……」
生徒たちから声が上がる。
一瞬、
みんな絵を描く手を止めた。
ただ景色を見る。
その時間も大切な思い出だった。
ホテルへ戻る道。
「今回、一番印象に残った場所は?」
華子が聞く。
歩美は少し考える。
「全部」
「全部?」
「ルーブルも、モンマルトルも、今日の夜景も」
華子は笑う。
「歩美らしい」
その頃。
明高荘。
日本では朝。
あかりと奈緒が届いた写真を見る。
「夜のエッフェル塔だ!」
「きれい……」
さやかも写真を見る。
「これは絵にしたくなるね」
ちかは写真を見て、
「フランスにも家庭菜園あるのかな」
と言っていた。
「そこを見るんだ」
しずくが笑う。
パリ最後の夜。
歩美はスケッチブックを閉じる。
そこには、
たくさんのフランスの景色が残っていた。
日本へ帰ったら、
明高荘のみんなに見せたい。
そう思いながら、
静かなパリの夜を過ごすのだった。




