文化祭の出し物を決める回
9月上旬。
二学期が始まって数日。
ホームルーム。
今日は文化祭の出し物を決める日だった。
「さて」
担任の先生が言う。
「そろそろ決めないと準備が間に合いません」
教室がざわつく。
「何する?」
「展示?」
「販売?」
様々な意見が飛び交う。
歩美は黒板を見つめる。
美術科のクラスなので、やはり作品展示が中心になる。
しかし。
「展示だけじゃ寂しくない?」
歩美が言った。
「確かに」
華子も頷く。
するとクラスメイトが提案する。
「体験コーナーとか?」
「いいかも」
「絵を描いてもらう?」
話が少しずつまとまり始める。
結局。
今年の美術科二年生は、
『夏の思い出展』
をテーマにすることになった。
神鍋高原。
海水浴。
花火。
夏の風景を描いた作品を展示する。
さらに。
来場者向けに簡単なスケッチ体験コーナーも設置する。
「楽しそう」
歩美が言う。
「去年より文化祭っぽい」
華子も笑った。
放課後。
明高荘。
談話室。
「文化祭何するの?」
さやかが聞く。
「夏の思い出展」
歩美が答える。
「へえ」
「神鍋とか海とか描く予定」
すると、
さやかが少し考える。
「家庭菜園は?」
「またそれ?」
華子が笑う。
「今年の夏の主役だったでしょ」
確かに。
トマト。
キュウリ。
枝豆。
オクラ。
とうもろこし。
みんなで世話をして、
みんなで収穫した。
「描こうかな」
歩美が言う。
さやかは少し嬉しそうだった。
その横で、
ちかが手を挙げる。
「私は文化祭でたこ焼き食べる!」
「まだ何が売られるか決まってないよ」
しずくが言う。
「じゃあたこ焼き売ってほしい!」
食べ物のことしか考えていなかった。
夜。
歩美はスケッチブックを開く。
今年の夏を振り返る。
楽しかった思い出がたくさんあった。
神鍋高原の青空。
大蔵海岸の海。
花火大会の夜空。
そして、
明高荘の庭で育った野菜たち。
「どれを描こうかな」
文化祭まであと数週間。
美術科らしい、
忙しくて楽しい日々が始まろうとしていた。




