神鍋高原スケッチ合宿1日目の回
8月上旬。
夏休み。
明高美術科恒例のスケッチ合宿の日がやってきた。
明石高校美術科のスケッチ合宿は、1・2年生を対象に夏季休業中に行われる2泊3日の行事で、仲間と寝食を共にしながら制作に打ち込むのが特徴である。
早朝。
明高荘前。
歩美。
華子。
あかり。
奈緒。
四人は大きな荷物を抱えていた。
スケッチブック。
油絵セット。
筆。
画材箱。
「重い……」
あかりがふらつく。
「まだ出発してないよ」
奈緒が言う。
「もう合宿終わった気分」
全然始まっていなかった。
見送りには、
純子。
優子。
あけみ。
涼子。
初美。
恵子。
つむぎ。
そして弓木家の、
りん。
さやか。
しずく。
ちか。
全員集合だった。
「行ってらっしゃい!」
「楽しんでね!」
しずくが手を振る。
「いっぱい描いてきてね」
りんも笑う。
すると、
「お土産!」
ちかだった。
「何が欲しいの?」
歩美が聞く。
「とうもろこし!」
「神鍋で収穫するわけじゃないから」
華子が突っ込んだ。
バス出発。
「行ってきまーす!」
窓から手を振る四人。
やがて明石の街並みが遠ざかり、
景色は山へと変わっていった。
数時間後。
神鍋高原到着。
「涼しい!」
あかりが驚く。
夏の神鍋高原は比較的過ごしやすく、多くの学校や団体が合宿地として利用している。
広い空。
緑の山。
田園風景。
「きれい……」
歩美が思わず立ち止まる。
「描きがいありそう」
奈緒も周囲を見回した。
到着後。
先生から説明。
「三日間で一枚の油絵を仕上げます」
「はい!」
合宿では、3日間で1枚の油彩画制作に取り組む。
まずは下見。
学年ごとにスケッチポイントを探す。
歩美は山並みを選んだ。
華子は古い民家と木陰。
奈緒は高原の風景。
あかりは――
「全部描きたい」
「無理」
奈緒が即答した。
午後。
制作開始。
キャンバスを立てる。
下描きを始める。
風の音だけが聞こえる。
歩美は集中していた。
華子も黙々と筆を動かす。
奈緒は慎重に構図を調整。
あかりは勢いよく描き始める。
一時間後。
「山が大きすぎる!」
「また?」
歩美が笑う。
「思ったより近かった!」
遠近感に苦戦していた。
夕方。
制作終了。
全員少し疲れている。
「肩が痛い」
「分かる」
「まだ一日目なのに」
それでもキャンバスを見ると、
少しずつ作品らしくなっていた。
「明日はもっと進めよう」
歩美が言う。
宿へ戻る。
夕食。
お腹が空いていたので、
みんなよく食べた。
「おかわり!」
あかりは元気だった。
「描いてる時より元気」
奈緒が言う。
夜。
レクリエーション開始。
夜にはレクリエーションが行われている。
腕相撲。
気配切り。
大盛り上がりだった。
消灯前。
部屋。
布団に入った四人。
「楽しかったね」
歩美が言う。
「うん」
「明日も描くんだよね」
「合宿だからね」
華子が答える。
窓の外には、
明石ではなかなか見られない満天の星空。
「あれ、明高荘のみんな何してるかな」
あかりがつぶやく。
「たぶんちかちゃんが騒いでる」
全員。
「それはそう」
満場一致だった。
こうして神鍋高原でのスケッチ合宿1日目は終了。
作品も、
思い出も、
まだ始まったばかりだった。




