6月15日、歩美の誕生日
6月15日。
朝から小雨が降っていた。
林歩美はいつものように学校へ行き、いつものように授業を受けて帰ってきた。
「ただいまー」
明高荘の玄関を開ける。
すると、なぜか建物の中が静かだった。
「誰もいないのかな?」
首をかしげながら談話室へ向かう。
ガチャ。
ドアを開けた瞬間――
「歩美、お誕生日おめでとう!」
みんなの声が響いた。
「うわっ!?」
驚いて一歩後ろへ下がる歩美。
談話室には遠野華子、山下純子、島居優子、東ゆり、林山寛子、星野あけみ、そして弓木家のみんなが集まっていた。
テーブルの上には大きなケーキまで置かれている。
「みんな……」
歩美は思わず笑顔になった。
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「ほら、主役なんだから座って」
華子に促され、歩美は席につく。
「16歳おめでとう!」
「いや、年齢は毎年変わるからね」
純子の言葉にみんなが笑った。
「それはそうだけど」
歩美も笑う。
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ケーキを切り分けながら、あけみが聞いた。
「歩美ちゃん、今年の目標は?」
「えー?」
急に聞かれて困る。
しばらく考えてから答えた。
「遅刻を減らす!」
「まずそこなんだ」
「大事だよ!」
談話室はまた笑いに包まれた。
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プレゼント交換も始まった。
華子からはかわいい文房具。
純子からはマグカップ。
ゆりからはしおり。
あけみからはお菓子の詰め合わせ。
どれも歩美が喜びそうなものばかりだった。
「ありがとう!」
歩美は何度も頭を下げた。
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その頃。
弓木さやかは小さな鉢植えを持ってきた。
「これもどうぞ」
「なに?」
「大葉です」
一瞬、談話室が静かになった。
「なんで誕生日プレゼントが大葉なの?」
歩美が思わず聞く。
「育てる楽しさを共有したくて」
真面目な顔のさやか。
みんなは笑いをこらえていた。
「うん……ありがとう」
歩美は受け取った。
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誕生日会が終わった後も、みんなは談話室に残って雑談を続けた。
学校の話。
夏休みの話。
家庭菜園の話。
テレビの話。
特別なことは何もない。
だけど歩美には、それがとても嬉しかった。
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夜。
自室へ戻る前、歩美は談話室を振り返った。
ここに来てからできた仲間たち。
一緒に笑い、一緒に過ごす毎日。
「いい誕生日だったな」
そうつぶやく。
窓の外では雨が静かに降っていた。
けれど歩美の心は、とても温かかった。
明高荘で迎える誕生日は、今年も忘れられない一日になったのだった。




