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明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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5/15

みんなで紫陽花を見に行こう


6月のある日曜日。


朝から空はどんよりと曇っていた。


梅雨らしい天気で、今にも雨が降り出しそうだった。


談話室では住人たちが思い思いに過ごしている。


林歩美はソファでごろごろ。


遠野華子は本を読んでいる。


山下純子と島居優子は雑誌を見ながらおしゃべりしていた。


すると弓木しずくが窓の外を見ながら言った。


「今日、紫陽花を見に行かない?」


「紫陽花?」


歩美が顔を上げる。


「近くの公園で見頃らしいよ」


「いいかも」


東ゆりが頷いた。


話はあっという間にまとまった。


弓木りん、しずく、さやか、ちか。


高校生組の歩美、華子、純子、優子、ゆり、寛子。


短大生の星野あけみと斉藤涼子。


社会人の東田恵子、菅原初美。


ニートの岡つむぎ。


総勢十五人近い大所帯である。


「遠足みたい」


涼子が笑った。


昼前。


みんなで公園へ向かう。


途中で小雨が降り始めたが、傘を差すほどではない。


むしろ紫陽花には似合う天気だった。


「紫陽花って雨の日の方がきれいだよね」


あけみが言う。


「確かに」


華子も同意した。


公園へ到着すると、遊歩道の両側にたくさんの紫陽花が咲いていた。


青。


紫。


ピンク。


白。


色とりどりの花が梅雨空の下で鮮やかに咲いている。


「わあ……」


ちかが目を輝かせた。


歩美はスマホで写真を撮り始める。


「こっちもきれい!」


「あんまり前に出ると濡れるよ」


華子が声をかける。


しかし歩美は気にしていなかった。


一方、涼子は持参したカメラで撮影していた。


「その写真あとで見せてください」


優子が言う。


「もちろん」


涼子は楽しそうだった。


美術科の面々は自然と景色の見方が違う。


寛子は花の形をじっくり観察している。


純子は構図を考えている。


華子は色の組み合わせに注目していた。


「スケッチしたくなるね」


ゆりが言う。


「分かる」


みんな頷いた。


その頃、ちかはしずくと一緒に歩いていた。


「この青いの好き!」


「私はこっちのピンクかな」


二人はお気に入りの紫陽花を探している。


りんはそんな様子を微笑みながら見守っていた。


公園の東屋で休憩することになった。


恵子が持ってきたお茶を配り、初美がお菓子を取り出す。


「準備いいですね」


つむぎが感心する。


「こういうの好きだから」


恵子は笑った。


休憩しながらみんなで雑談する。


学校の話。


仕事の話。


夏休みの予定。


年齢も立場も違う人たちが自然に話している。


それが明高荘らしい空気だった。


帰る頃には雨が少し強くなっていた。


みんな傘を差しながら歩く。


それでも誰も嫌そうな顔はしていない。


むしろ満足そうだった。


「来てよかったね」


歩美が言う。


「うん」


「季節を感じた」


涼子も頷く。


明高荘へ戻ると、談話室で撮った写真を見せ合った。


同じ場所で撮ったのに、みんな違う写真になっている。


「面白いね」


華子が言う。


「見ているものが違うんだろうね」


寛子が答えた。


窓の外では雨が静かに降り続いている。


紫陽花の季節はもう少し続きそうだった。


そんな梅雨の日の、小さな思い出の一日だった。

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