新緑のバーベキュー大会
ゴールデンウィーク中3日目の日曜日。
明高荘の談話室では、住人たちがだらだらと過ごしていた。
「いい天気だねえ」
窓の外を眺めながら林歩美が言う。
空は青く、風も爽やかだった。
すると山下純子が突然立ち上がった。
「こんな日はバーベキューでしょ!」
「えっ?」
「急だね」
遠野華子が苦笑する。
しかし、反対する人はいなかった。
会場は弓木家の庭。
大家さん家の弓木さやかも大喜びだった。
「ちょうど大葉が育ってきたんですよ!」
「また家庭菜園の話だ」
歩美が笑う。
「大葉も焼くんですか?」
星野あけみが尋ねる。
「肉に巻いて食べるとおいしいですよ」
さやかは自信満々だった。
昼前から準備開始。
炭を並べる山下純子。
テーブルを運ぶ東ゆり。
食材を切る華子とあけみ。
歩美はというと――
「私、応援係!」
「働いて」
全員から同時にツッコまれた。
結局、歩美は紙皿や箸を並べる係になった。
火がつくと、肉や野菜が次々に網へ乗せられた。
ジュウウウッ――。
香ばしい匂いが庭いっぱいに広がる。
「これは反則だ……」
歩美のお腹が鳴った。
「まだ焼けてない」
華子が冷静に言う。
「待てない!」
「待ちなさい」
やがて食事開始。
牛肉。
豚肉。
ソーセージ。
そしてさやかが育てた大葉。
意外にも大葉は大好評だった。
「さっぱりしておいしい」
「肉と合うね」
「もっとないの?」
さやかは嬉しそうに追加を持ってきた。
食後。
住人たちは庭のテーブルを囲んで麦茶を飲んでいた。
5月の風は心地よく、真夏ほど暑くない。
「今の時期のバーベキューっていいね」
東ゆりが言う。
「夏だと暑すぎるもんね」
「あんまり蚊もいないし」
みんな納得した。
その時、さやかが立ち上がる。
「皆さん、見てください!」
案内された先には、家庭菜園のプランターが並んでいた。
まだ小さなトマトやナスの苗が植えられている。
「夏には収穫できますよ」
「また見学会が始まった」
歩美が笑う。
しかし誰も嫌がらない。
むしろ住人たちは成長の様子を興味深そうに見ていた。
夕方。
片付けを終えた一同は談話室へ戻った。
窓から入る風が気持ちいい。
「今日は楽しかったね」
「うん」
「またやろう」
「次は夏かな?」
そんな話をしながら、みんなはのんびりと過ごした。
派手なイベントではなかったけれど、新緑の季節にみんなで囲んだバーベキューは、明高荘らしい温かな一日になったのだった。




