卒業式
3月。
少し暖かくなった朝。
明石高校では卒業式の日を迎えていた。
明高荘。
朝早くから203号室と204号室は慌ただしかった。
「ネクタイ曲がってない?」
東ゆりが聞く。
「大丈夫だと思う」
林山寛子が答える。
いつも冷静な二人も、今日は少しだけ落ち着かない。
玄関を出ると、
そこには歩美たちがいた。
「卒業おめでとうございます!」
歩美が頭を下げる。
「まだ卒業式前だよ」
ゆりが笑う。
「先に言っておこうと思って」
華子も続く。
「帰ってきたら先輩じゃなくなってるんですね」
「そうなるね」
少し寂しい言葉だった。
学校へ到着。
講堂には卒業生が並んでいる。
卒業証書授与。
校長先生の式辞。
在校生代表の送辞。
卒業生代表の答辞。
ゆりは三年間を思い出していた。
入学した日。
文化祭。
友達との時間。
そして明高荘での暮らし。
隣を見ると、
寛子も静かに前を向いていた。
卒業生の歌が始まる。
会場の空気が少し変わる。
卒業は嬉しい。
でも別れもある。
そんな複雑な気持ちが伝わってくる。
式が終わる。
校門前では記念撮影が始まっていた。
夕方。
ゆりと寛子が明高荘へ帰ってきた。
「ただいま」
その瞬間。
パンッ!
クラッカーの音が響く。
「うわっ!」
玄関には住人全員が集まっていた。
「卒業おめでとうございます!」
歩美。
華子。
純子。
優子。
あけみ。
涼子。
初美。
恵子。
つむぎ。
そして弓木家のみんな。
全員が拍手する。
「びっくりした」
ゆりが笑う。
「成功!」
純子がガッツポーズをした。
「三回失敗したけどね」
優子が言う。
「言わなくていいの!」
夜。
弓木家で卒業祝いが開かれた。
テーブルには料理が並ぶ。
「先輩たちがいなくなるの寂しいです」
歩美が言う。
華子が言う。
「実感ないね」
ゆりも頷く。
窓の外には春の夜空。
卒業は終わりではない。
新しい生活の始まりだ。
ゆりは温かいお茶を飲みながら思った。
「明高荘で過ごした高校生活、楽しかったな」
寛子も静かに頷く。
こうして東ゆりと林山寛子は高校を卒業した。
けれど明高荘の日常は、まだ続いていく。




