静かな大晦日
12月31日。
明高荘は静かだった。
いつも賑やかな廊下にも人影はない。
住人たちはそれぞれ実家へ帰省している。
林歩美は家族と年越し。
遠野華子も実家へ。
山下純子と島居優子もそれぞれ帰省中。
東ゆりと林山寛子は久しぶりに家族と過ごしていた。
あけみも涼子も。
初美も恵子も。
つむぎも。
みんな明高荘を離れている。
そんな中。
隣の弓木家だけはいつも通りだった。
「静かだねえ」
弓木さやかが窓の外を見る。
明高荘の廊下の電気だけがぽつんと光っている。
「いつも騒がしいからな」
弓木りんが言う。
「なんか変な感じ」
弓木しずくもうなずいた。
夕方。
弓木家では年越しの準備が進む。
台所ではそばを茹でる湯気が立ち上る。
テレビでは年末特番。
こたつの上にはみかん。
「歩美ちゃん達、今頃何してるかな」
さやかが言う。
「たぶん家族と紅白見てる」
りんが答える。
「純子さんは?」
「たぶん騒いでる」
全員が納得した。
夜10時。
外はすっかり冷え込んでいた。
さやかは窓から明高荘を見る。
春には新入生が入り、
夏には家庭菜園が賑わい、
秋には文化祭があり、
冬にはクリスマス会があった。
「今年もいろいろあったね」
「うん」
しずくが答える。
「来年もきっと騒がしいよ」
りんが笑う。
「それが明高荘だからね」
やがて時計の針が深夜0時に近づく。
「あと少しで新年だ」
テレビの向こうでも年越しの準備が進む。
静かな大晦日。
でも寂しいわけではない。
住人たちはそれぞれの場所で年を越し、
また数日後には明高荘へ帰ってくる。
その時にはきっと、
またいつもの賑やかな日常が始まる。
「よいお年を」
さやかが小さくつぶやいた。
窓の向こうの明高荘は静かだった。
けれどその静けさも、新しい一年の始まりを待っているようだった。




