師走の明高荘
12月。
明高荘の廊下は、いつもより少しだけ慌ただしかった。
ある日の夕方。
「もう12月かあ」
林歩美はベランダに干した洗濯物を取り込みながら空を見上げた。
日が落ちるのが早い。
午後5時なのに、もう夜みたいだった。
「大掃除しなきゃなあ」
遠野華子が自室のドアを開ける。
しかし部屋の中には、
本
雑誌
ノート
謎の紙袋
が積み上がっていた。
「……来年でいいか」
「よくない」
歩美が即答した。
その頃。
山下純子と島居優子は修学旅行から持ち帰ったお土産の整理をしていた。
「フランス行ったの先月なのに、もう年末だよ?」
優子が言う。
「一年早すぎる!」
純子はカレンダーを見て驚いた。
社会人組も忙しい。
菅原初美は仕事帰りにため息をつく。
「年末進行って本当にあるんだね……」
東田恵子もうなずく。
「12月だけ時間の流れがおかしい」
夜。
明高荘の住人たちは大家の弓木家に集まっていた。
テーブルにはみかん。
こたつも出ている。
「今年何が一番印象に残った?」
弓木さやかが聞く。
「文化祭」
歩美が答える。
「フランス」
純子が答える。
「売り切れ事件」
華子が答える。
「それ文化祭じゃん」
全員が笑った。
しばらくして窓の外を見ると、冷たい風が木を揺らしていた。
秋が終わり、本格的な冬が来ている。
「来年もこんな感じかな」
歩美が言う。
「たぶんね」
華子が答える。
「その前に大掃除だけど」
優子が言う。
その瞬間。
全員の動きが止まった。
「……忘れてた」
大掃除は、日本で年末に行われる定番の習慣で、新年を迎える前に一年の汚れを落とす意味がある。
数日後。
明高荘では住人総出の大掃除が始まることになる。
そのことを、この時の彼女たちはまだ甘く考えていた。
冬の夜は長い。
でも、みんなで過ごす師走は少しだけ暖かかった。




