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ほのぼの日常系、明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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29/113

夏野菜の収穫


文化祭が終わって数日後。

明高荘の裏の小さな畑は、やけに元気だった。


「……また増えてる」

林歩美がしゃがみこんで言う。


緑の葉の間から、ナス、トマト、キュウリが次々と顔を出している。


■ナス


「これ、もう取っていいやつじゃない?」

遠野華子が指さす。


ツヤのある紫。少し重そうに下がっている。


「ナスはツヤがあるうちがいいんだって」

歩美が思い出したように言う。


「じゃあ今がピーク?」


「たぶん今」


ぷちっ、とハサミの音。

切った瞬間、夏の匂いが少し濃くなる。


■トマト


真っ赤な実が、日差しを受けて光っていた。


「これ、もう“食べろ”って顔してる」

華子が笑う。


「顔って何」


でも確かにそう見える。


ひとつ取ると、指に少しだけ甘い香りが残る。


■キュウリ


「こっちは伸びるの早いね」

弓木さやかが驚く。


前の日は小さかったのに、もう立派なサイズになっている。


「油断するとすぐ大きくなるタイプだこれ」

歩美が言う。


「人間みたいだね」

華子が返す。


■静かな時間


収穫は驚くほど静かだった。


文化祭のときみたいな騒ぎはない。

でも、その静けさが逆に心地いい。


しずくは淡々と籠に並べ、りんは数をメモしている。


「収穫効率:良好」


いつも通りの一言。


■小さな達成感


「なんかさ」

歩美が言う。


「文化祭よりこっちのほうが落ち着くね」


華子は笑う。


「でも、どっちも“作ってる感じ”は同じじゃない?」


少し風が吹いて、葉が揺れる。


ナスもトマトもキュウリも、

ただそこにあるだけなのに、ちゃんと季節を作っていた。


歩美は小さく言う。


「ちゃんと終わって、ちゃんと続いてるんだね」


収穫はまだ終わらない。

でも、急ぐ理由もない。


夏は、まだここに残っていた。

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