9月25日は遠野華子の誕生日
9月25日。
朝。
遠野華子はいつも通り登校していた。
「おはよう」
「おはよー」
いつもと変わらない。
少なくとも華子はそう思っていた。
教室に入る。
誰も何も言わない。
「……?」
少しだけ拍子抜けする。
誕生日だからといって特別扱いされたいわけじゃない。
でも、誰も触れないとそれはそれで気になる。
昼休み。
歩美も純子も普通。
東ゆりも普通。
林山寛子も普通。
「もしかして忘れられてる?」
華子は少しだけ不安になった。
放課後。
明高荘へ帰る。
玄関は静かだった。
「ただいまー」
返事がない。
珍しい。
キッチンへ向かう。
その瞬間。
パァン!!
クラッカーの音が響いた。
「誕生日おめでとう!!」
部屋の明かりがつく。
歩美。
純子。
ゆり。
寛子。
そして弓木家のみんな。
全員が集まっていた。
「えっ!?」
華子は完全に固まる。
テーブルの上にはケーキ。
その横には収穫したトマトやナスやキュウリを使った料理まで並んでいる。
「さやか特製サラダ!」
「ちょっとキュウリ多くない?」
「収穫できたから」
純子が笑う。
「学校で言ったらバレるでしょ?」
「だからみんな黙ってたの?」
「そういうこと」
歩美が小さな箱を差し出す。
「みんなから」
「開けていい?」
「どうぞ」
中には小さなキーホルダー。
明高荘のみんなで選んだものだった。
華子は少し照れながら言う。
「ありがとう」
すると純子が言う。
「華子が素直にお礼言った!」
「失礼だな!」
みんなが笑う。
夜。
ケーキを食べながら雑談が続く。
文化祭の話。
夏野菜の話。
学校の話。
特別なことは何もない。
でも、それが心地よかった。
帰り際。
華子はふと窓の外を見る。
秋の風が少しだけ涼しい。
「いい誕生日だったな」
誰にも聞こえないくらい小さくつぶやく。
明高荘の灯りは、いつもより少しだけ遅くまで消えなかった。




