午後、カフェは立ち上がる
売り切れ事件からしばらく。
午前の嵐が嘘みたいに、教室は少し静かになっていた。
「……終わった?」
林歩美がぽつりと聞く。
「終わってない」
山下純子は即答する。
「まだ午後ある」
■再起動フェーズ
まず始まったのは“再建”。
紙コップ再配備
砂糖補充(緊急で職員室から借りる)
メニュー再編
気合いの再注入
「カフェっていうか補給基地だねこれ」
遠野華子の一言が妙に的確だった。
■午後メニュー、変更
黒板が書き換えられる。
「午後限定メニュー」
冷たい紅茶(安定供給)
パンセット(焼ける分だけ)
謎の“午後ブレンド”
水(安定の主力)
「一周回って強いな」
歩美が笑う。
■客層が変わる
午後になると空気も変わる。
昼ピークで来た人たちが再来店
文化祭巡り中のグループ
なぜか落ち着いた常連化した生徒
「ここ、午前で終わった店じゃない?」
「午後からが本番らしいよ」
噂が勝手に進化していた。
■“余裕”が戻る瞬間
午前の地獄とは違い、少しだけ呼吸ができるようになる。
弓木さやかが紙コップを積みながら言う。
「午前がバグだっただけでは?」
しずくがうなずく。
りんが一言メモを書く。
「正常化」
■カフェっぽさ、復活
午後の光が窓から斜めに入る。
コップに入った紅茶が少しきれいに見える。
「……なんかさ」
華子が言う。
「今だけ普通のカフェじゃない?」
歩美も同意する。
「午前の記憶消えたら完璧だね」
■山下純子の締め
「午後は“安定運転”でいくよ」
誰かが聞く。
「午前は?」
即答。
「事故」
■そして時間は流れる
注文は落ち着き、列も短くなり、
教室には少し余裕が戻る。
でも、その“落ち着き”の中に、
ちゃんと文化祭の楽しさが残っていた。
歩美はふと気づく。
(忙しすぎても楽しいし、落ち着いてても楽しいんだな)
窓の外では、他のクラスの笑い声が聞こえる。
文化祭はまだ終わらない。
でもこのカフェは、少しだけ呼吸を取り戻していた。




