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ほのぼの日常系、明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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25/115

売り切れ事件、そして午前終了


文化祭はまだ始まって2時間。

カフェはすでに“昼前ピーク”に突入していた。


「ホットコーヒー3、紅茶2、スープ1!!」

「レジ待ち列、廊下まで伸びてる!!」

「紙コップ足りない!!」


教室の中は完全に戦場だった。


林歩美はレジでひたすら注文をさばいている。


「えっと、コーヒーと……えっと……」

「次のお客様こちらです!!」


横から遠野華子が補助に入る。


「メニュー覚える前に終わりそうなんだけど」


「それ言わないで」


そのとき、キッチン側から声が飛ぶ。


「砂糖、ない!!」

「ミルクもない!!」

「いやストローもない!!」


一瞬、全員が固まる。


山下純子が状況を確認して、ゆっくり言った。


「……売り切れです」


「何が!?」

「ほぼ全部」


開店からまだ午前中なのに。


看板メニューがほぼ消滅していた。


コーヒー:終了


スープ:終了


紙コップ:危険域


余力:なし


弓木さやかが叫ぶ。


「早すぎない!?文化祭まだ半分も終わってないよ!?」


しずくは無言で空の容器を見つめている。


りんはメモに一行書いた。


「想定外の速度」


教室の外では、列がまだ続いていた。


「え、もう終わり?」

「まだ11時だよ?」

「カフェなのに?」


混乱が広がる。


歩美は一度深呼吸して言った。


「これ……やばいやつだね」


華子が即答する。


「でもさ」


「うん?」


「逆に伝説じゃない?」


その言葉で、なぜか空気が少し変わる。


山下純子が立ち上がる。


「じゃあ第二フェーズいくよ」


「まだあるの!?」


急遽始まった“緊急メニュー変更”。



ぬるめ紅茶


パン(焼ける限り)


気合


もはやカフェなのか分からない。


それでも客は減らない。


むしろ増えている。


「売り切れ早い店あるって聞いて」

「逆に来た」

「ネタになるやつだよね」


完全に評判が歪んでいた。


昼前。

ついにピークが終わる。


教室は一気に静かになる。


歩美は椅子に座り込んで言った。


「文化祭ってさ……」


「うん」華子が返す。


「体力ゲーだね」


その横で純子は満足そうに言う。


「でも、成功したってことでいいよね?」


誰も否定しなかった。


窓の外では、まだ文化祭の音が続いている。

でもこの教室だけ、少しだけ“戦いの後”みたいに静かだった。

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