文化祭当日、朝から終わってる
朝6時50分。
校舎の前はすでに人が集まり始めていた。
まだ開いていないはずの教室から、なぜか光が漏れている。
「……もう誰かいるな」
林歩美が眠そうに言う。
「嫌な予感しかしない」
遠野華子はカバンを肩にかけ直した。
扉を開けた瞬間。
「遅い!!!」
山下純子の声が飛んだ。
教室はすでに“カフェ”になりかけている。
いや、なりかけているというより――
半分もう始まっていた。
「プリンター直った?」
歩美が聞くと、
「直ってない。でも手書きでいく」
純子は即答。
「文明捨てた?」
カウンターでは弓木さやかが紙コップを積み上げていた。
「なんでこんなにあるの?」
「足りないと地獄だから」
「どっちにしても地獄では?」
キッチン側ではすでに戦場。
しずくが無言でトーストを焼き続け、りんが淡々とミスをメモしている。
「まだオープン前だよね?」
華子が言うと
「もうオープンしてる気持ちでやってる」
とだけ返ってきた。
そこへ2・3年生チームが合流する。
「おはよー……って、え、もう始まってる?」
「いや始まってない!」
「でも接客してる人いるけど?」
→一瞬全員が固まる。
「それ純子の朝練」
歩美の説明が一番まともだった。
その頃、入口前。
「いらっしゃいませー!!文化祭カフェでーす!!」
まだ開場前なのに呼び込みが始まっている。
先生が遠くで見ている。
何も言わない。
もう止める気力もない。
8時30分。
「開店します!!」
純子の声で、なぜか予定より30分早くスタート。
「早くない!?」
「勢いが正解!」
最初の客はまだ準備中のはずの生徒。
「え、もういいの?」
「いいです!!」
もうルールが曖昧。
歩美はレジに立ちながら思う。
(これ、カフェっていうか……戦場だな)
華子が横で言う。
「でもさ」
「うん?」
「こういうのが一番楽しいんだよね」
朝の光が窓から差し込んで、
少しずつ人が増えていく。
まだ始まったばかりなのに、
もう終わりそうな勢いで騒がしい。
でも――
このドタバタが、ちゃんと“文化祭”だった。




