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ほのぼの日常系、明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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206/210

オマケ・歩美、勝手に避難訓練を始める


土曜日の昼。


談話室ではみんながお菓子を食べながらのんびりしていた。


突然。


**ガンッ!**


ドアが勢いよく開いた。


「緊急事態です!」


歩美だった。


華子はお茶を飲みながら言う。


「そのドアの開け方が一番緊急事態。」


歩美はホワイトボードを取り出した。


「これから!」


バン!


**『第一回・明高荘避難訓練』**


「を始めます!」


真理子が拍手する。


「いいですね!」


華子が聞く。


「誰が許可したの?」


「私!」


「却下。」


歩美は構わず続ける。


「今から火事という設定です!」


ちかが慌てる。


「えっ!?」


「設定だから!」


さやかがジョウロを持って立ち上がる。


「消します!」


「まだ燃えてない!」


有紀がおろおろする。


「私は何を描けば……」


「描かなくていい!」


そこへ、りんがやってきた。


「何をしているんですか?」


歩美が胸を張る。


「避難訓練!」


りんは少し考えてから言った。


「火元は?」


歩美は黙る。


「……。」


「決めてなかったの?」


「今決める!」


「そこから!?」


歩美は談話室を見回した。


「じゃあ……」


指差す。


「華子の部屋!」


「なんで私なのよ!」


「一番リアルだから!」


「意味が分からない!」


その瞬間。


つむぎがぽつり。


「……逃げる。」


「そうそう!」


歩美がうなずく。


「避難開始!」


全員が玄関へ向かう。


ところが。


玄関に着くと。


つむぎがいない。


歩美が振り返る。


「つむぎさん?」


誰もいない。


三階を探す。


いない。


二階。


いない。


庭。


いない。


華子が青ざめる。


「本当にいない!」


歩美が叫ぶ。


「つむぎさん!」


返事はない。


五分後。


十分後。


十五分後。


全員で探しても見つからない。


真理子が泣きそうになる。


「まさか……。」


有紀も心配そう。


「どこへ……。」


歩美は決意した。


「警察を……」


その時。


**グゥ~~~。**


談話室から寝息が聞こえた。


全員が戻る。


ソファを見る。


誰もいない。


「え?」


また寝息。


**グゥ~~~。**


歩美がソファの背もたれを見る。


「まさか。」


ソファを壁から少し動かす。


そこには。


つむぎが毛布にくるまって寝ていた。


全員。


「そんな所で寝てたの!?」


つむぎがゆっくり目を開ける。


「……避難した。」


華子が首をかしげる。


「どこに?」


「静かな場所。」


「避難の意味が違う!」


歩美が笑い転げる。


「なんでソファの裏!」


つむぎは真顔で答えた。


「誰も来ない。」


「そりゃ来ないよ!」


その時。


ちかがソファの裏をのぞく。


「あっ!」


「どうした?」


「お菓子がいっぱいある!」


全員がのぞき込む。


ポテトチップス。


せんべい。


チョコレート。


クッキー。


グミ。


歩美が目を丸くする。


「秘密基地だ!」


華子がつむぎを見る。


「これ全部?」


つむぎはうなずく。


「非常食。」


「全部お菓子じゃない!」


りんが笑いをこらえながら聞く。


「いつ集めたんですか?」


「一年。」


「一年かけて隠してたの!?」


その時。


ちかが叫んだ。


「このポテチ!」


つむぎを見る。


「私の名前書いてある!」


全員が固まる。


つむぎは少し考えて言った。


「……預かってた。」


「勝手に預かるな!」


真理子が箱を見つける。


「これ私のチョコ!」


有紀も見つける。


「あっ、私のクッキー!」


さやか。


「ネギまである!」


「なんでネギ!?」


つむぎは真面目な顔で答えた。


「健康。」


「そこだけ急に健康志向!?」


みんなが笑い転げる。


華子はお腹を押さえながら言った。


「避難訓練を始めたら、お菓子泥棒の秘密基地を発見するなんて思わないわよ!」


歩美は大笑いしながら宣言した。


「本日の避難訓練!」


「終了!」


「成果!」


ホワイトボードに大きく書く。


**『ソファの裏は年に一回掃除すること。』**


りんは苦笑しながらうなずいた。


「それは本当に大事ですね。」


つむぎはソファの裏から最後に一袋のポテトチップスを取り出した。


「……これ誰の?」


袋には大きくマジックで書かれていた。


**『岡つむぎ』**


全員がつむぎを見る。


歩美が吹き出した。


「それは自分のでしょ!」


つむぎは袋を見つめ、しばらく考えてから静かに言った。


「……誰だろう。」


一瞬の静寂。


そして次の瞬間、明高荘中に笑い声が響き渡った。


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