オマケ・明高荘かくれんぼ大会
日曜日の昼下がり。
談話室では歩美がニヤニヤしながらホワイトボードに何かを書いていた。
「みんなー! 集まってー!」
住人たちが次々と集まる。
華子が嫌な予感しかしない顔で聞いた。
「今日は何?」
歩美は勢いよく振り返った。
「明高荘かくれんぼ大会!」
「また思いつきで始めたわね。」
「思いついたからね!」
「威張るところじゃない。」
真理子は大喜び。
「やりたいです!」
ちかも飛び跳ねる。
「私も!」
有紀は少し不安そう。
「私……隠れるの苦手かもしれません。」
りんは笑顔でルールを説明する。
「アパートの敷地内だけですよ。危ない場所は禁止です。」
「はーい!」
歩美が鬼になった。
「じゃあ数えるよ!」
「十!」
「九!」
「八!」
住人たちは一斉に散っていく。
「三!」
「二!」
「一!」
「もういいかーい!」
「もういいよー!」
歩美は勢いよく飛び出した。
最初に見つかったのは真理子だった。
植木鉢の後ろにしゃがんでいたが、お尻が全部見えていた。
「真理子ちゃん!」
「えっ!?」
「丸見えだよ!」
「そんなぁ!」
真理子は笑いながら出てきた。
次はちか。
カーテンの後ろに隠れたつもりだった。
しかし足だけ飛び出している。
歩美が指差す。
「足!」
「見えてた!?」
「最初から!」
談話室は笑いに包まれた。
有紀は本気だった。
押し入れの中にきれいに隠れている。
歩美は十分探した。
「いないなぁ。」
そのとき。
「くしゅん!」
小さなくしゃみ。
「あっ!」
押し入れを開ける。
有紀は恥ずかしそうに笑った。
「見つかっちゃいました……。」
「惜しかったね!」
続いて奈緒。
どこにもいない。
あかりも見つからない。
歩美は首をかしげた。
「二人とも上手だなぁ。」
すると華子が庭を指差した。
「歩美。」
「なに?」
「洗濯物。」
歩美が見る。
シーツの間から制服の裾が見えていた。
「あっ!」
シーツを開く。
奈緒とあかりが並んで立っていた。
「見つかった。」
「洗濯物が多すぎて安心してた。」
華子が笑う。
「隠れる場所としては悪くなかったわね。」
その頃。
さやかは家庭菜園の真ん中にしゃがんでいた。
ネギを持っている。
歩美が通り過ぎる。
「さやかちゃん見つからないなぁ。」
さやかは小さな声で言う。
「私はネギ……。」
華子が吹き出した。
「ネギはしゃべらない!」
「しまった!」
さやかも笑いながら立ち上がった。
残るは、みなみ、涼子、初美、恵子、しずく、りん、そしてつむぎ。
十分後。
みんな見つかった。
ただ一人を除いて。
「つむぎさんがいない!」
歩美が叫ぶ。
全員で探す。
談話室。
庭。
駐輪場。
三階。
どこにもいない。
ちかが心配そうに言う。
「帰っちゃった?」
華子もうなずく。
「あり得る。」
そのとき。
ソファから小さな声がした。
「……いるよ。」
全員が振り向く。
ソファを見る。
誰もいない。
もう一度声がした。
「……ここ。」
歩美がおそるおそる座面を持ち上げる。
中からつむぎが丸くなって出てきた。
「いたーーー!」
談話室は大爆笑。
真理子は涙を流して笑っている。
「そんな所に入れるんですか!」
つむぎはゆっくり立ち上がった。
「昼寝してた。」
「かくれんぼ中に寝るな!」
華子のツッコミが炸裂する。
歩美は笑いすぎて立てない。
「優勝はつむぎさん!」
みんなが拍手する。
つむぎは首をかしげた。
「……何が?」
「かくれんぼ!」
「ああ。」
少し考えてから一言。
「寝てただけ。」
その瞬間、全員がもう一度大笑いした。
こうして第一回明高荘かくれんぼ大会は、「勝つつもりのなかった人が優勝する」という、明高荘らしい結末で幕を閉じたのだった。




