ミニトマトとアブラムシ
6月のある朝。
弓木家の家庭菜園で、弓木さやかが難しい顔をしていた。
「どうしたの?」
学校へ行く途中の林歩美が声をかける。
さやかはミニトマトの鉢を指差した。
「アブラムシです」
「アブラムシ?」
歩美は葉っぱを覗き込む。
小さな虫がたくさん付いていた。
「うわっ」
思わず後ずさる。
放課後。
その話は談話室でも話題になった。
「ミニトマトが大変なんです」
さやかが説明する。
遠野華子も興味を持った。
「どうするの?」
「調べたら牛乳スプレーという方法があるみたいです」
すると斉藤涼子が言う。
「聞いたことある」
「本当ですか?」
「昔、うちのベランダ菜園で使ったことあるよ」
さやかの目が輝く。
翌日。
家庭菜園の前には見物人が集まっていた。
歩美。
華子。
純子。
優子。
ちか。
そして涼子。
まるで実験を見学する観客である。
「始めます」
さやかはスプレーボトルを取り出した。
中には薄めていない牛乳。
葉の裏側を中心に吹きかけていく。
シュッシュッ。
「これで効くの?」
歩美が聞く。
「アブラムシを窒息させる方法らしいです」
さやかが答えた。
ちかは興味津々だった。
「牛乳飲むんじゃないの?」
「今日は虫退治用」
「もったいない」
小学生らしい感想だった。
作業を終える。
あとは乾くのを待つだけだ。
「結果は明日ですね」
さやかが言った。
翌日。
朝からさやかは菜園へ向かった。
そこへ歩美たちも集まる。
「どう?」
「どうですか?」
みんな気になるらしい。
葉っぱを確認する。
昨日たくさんいたアブラムシはかなり減っていた。
「おおー!」
歩美が歓声を上げる。
「成功?」
「ある程度は成功ですね」
さやかは嬉しそうだった。
ただし涼子が言う。
「牛乳使った後は葉を水で洗った方がいいよ」
「匂いが残るんでしたっけ」
「そうそう」
経験者は頼りになる。
その後、みんなで葉っぱを確認する。
残っているアブラムシは手で取り除いた。
地味な作業だが意外と盛り上がる。
数週間後。
ミニトマトは元気に育っていた。
赤い実も増えている。
収穫の日。
さやかは最初の一個を摘み取った。
「できた!」
「おめでとう!」
ちかが拍手する。
談話室で試食会。
収穫したミニトマトをみんなで食べる。
「甘い!」
歩美が驚く。
「ちゃんと育てたからね」
さやかは少し誇らしそうだった。
窓の外には初夏の青空。
ミニトマトも元気に育ち、アブラムシ騒動も無事解決。
家庭菜園は今日も明高荘の日常に小さな話題を届けてくれるのだった。




