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明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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夏祭りの夜

明高スケッチ


「夏祭りの夜」


7月最後の土曜日。


朝から明高荘はどこか落ち着かない雰囲気だった。


近所の神社で開かれる夏祭りの日だからだ。


談話室では林歩美が朝からそわそわしていた。


「まだお昼前だよ?」


遠野華子が呆れたように言う。


「だって楽しみなんだもん」


歩美は窓の外を眺めながら答えた。


今日は明高荘の住人たちだけでなく、隣の弓木家のみんなも一緒に夏祭りへ行く予定だった。


夕方になると、談話室には次々と人が集まった。


山下純子、島居優子、東ゆり、林山寛子。


短大生の星野あけみと斉藤涼子。


社会人の東田恵子と菅原初美。


そして岡つむぎも少し遅れてやって来た。


「ごめん、準備に時間かかった」


「間に合ったから大丈夫」


純子が笑う。


さらに弓木家から、りん、しずく、さやか、ちかの四人も合流する。


「みんな揃ったね」


りんが人数を確認した。


大所帯である。


神社へ向かう道では、ちかが一番元気だった。


「早く行こう!」


「走らないの」


しずくが注意する。


しかし本人は全く気にしていない。


歩美も似たようなものだった。


「焼きそば食べたい!」


「まだ着いてないよ」


華子がため息をつく。


神社に着くと、境内は提灯の灯りで彩られていた。


焼きそば。


たこ焼き。


かき氷。


金魚すくい。


射的。


たくさんの屋台が並んでいる。


「お祭りだー!」


歩美とちかが同時に歓声を上げた。


まずはみんなで屋台を見て回る。


しずくは綿あめを買い、


優子はりんご飴を選ぶ。


あけみと涼子は射的に挑戦した。


「涼子さん上手!」


「たまたまだよ」


そう言いながら景品のお菓子を獲得していた。


一方、歩美とちかは金魚すくいに夢中だった。


「取れた!」


「私も!」


二人とも大はしゃぎである。


その様子を見ていた恵子が笑った。


「本当に仲いいね」


「年齢差を感じないですよね」


初美も頷く。


境内の端では、つむぎと寛子がベンチで休憩していた。


「人が多いね」


「お祭りだからね」


賑やかな空気を眺めながら、二人はのんびり話している。


こういう静かな時間も悪くない。


その後、みんなで焼きそばやたこ焼きを買い込み、境内の広場で食べた。


「おいしい!」


歩美は満面の笑み。


「祭りの食べ物って不思議だよね」


純子が言う。


「家で食べるよりおいしく感じる」


みんな納得した。


日が完全に沈む頃、祭りの雰囲気はさらに盛り上がった。


太鼓の音が響き、人々の笑い声が広がる。


ちかはヨーヨー釣りの戦利品を見せて回っていた。


「見て見て!」


「よかったね」


りんが優しく頭をなでる。


やがて花火の時間になった。


住人たちは神社近くの広場へ移動する。


夜空を見上げる。


ドン――。


大きな音とともに、最初の花火が打ち上がった。


赤、青、金色。


色とりどりの花火が夜空を彩る。


「きれい……」


誰かがそうつぶやいた。


その言葉にみんなが頷く。


普段は賑やかな歩美も、この時だけは静かに空を見上げていた。


花火が終わると自然と拍手が起こった。


少し名残惜しい気持ちを抱えながら、みんなは帰り道につく。


夜風は昼間よりずっと涼しかった。


「楽しかったね」


あけみが言う。


「うん」


「また来年も行こう」


ちかが元気よく言った。


みんな笑顔で頷く。


明高荘へ戻った後も、談話室ではしばらく祭りの話が続いた。


射的の景品。


金魚すくい。


屋台の食べ物。


そして花火。


話題は尽きない。


夏祭りは毎年ある。


それでも、今年の夏祭りは今年だけのものだ。


明高荘の住人たちは、楽しかった一日を思い返しながら夜を過ごすのだった。


窓の外には、夏の夜空が静かに広がっていた。



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