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明高スケッチ  作者: 九頭龍りく


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11/15

回覧板は誰の手に


6月のある夕方。


明高荘の隣にある弓木家の玄関先で、弓木りんが一冊の回覧板を手にしていた。


「さて、次は明高荘ね」


自治会の回覧板である。


地域清掃のお知らせや夏祭りの日程、防災訓練の案内などが挟まれている。


りんは慣れた様子で明高荘へ向かった。


談話室。


林歩美、遠野華子、山下純子、島居優子が集まっていた。


そこへりんが入ってくる。


「回覧板持ってきたよ」


「あ、回覧板だ」


歩美が受け取る。


「ちゃんと回してね」


「たぶん大丈夫」


その返事に、りんは少し不安そうな顔をした。


さっそく中を見る。


夏祭りの日程。


地域清掃。


ラジオ体操。


防災訓練。


いろいろなお知らせが入っている。


「夏祭りあるんだ」


歩美の目が輝いた。


「そこしか見てないでしょ」


華子が言う。


「だって大事だし」


その後、回覧板は純子へ。


純子から優子へ。


優子からゆりへ。


順調に回っているように見えた。


しかし翌日。


弓木りんが確認に来た。


「回覧板どこ?」


談話室が静まり返る。


「……あれ?」


歩美が辺りを見回した。


ない。


どこにもない。


「なくしたの!?」


しずくが驚く。


「いや、たぶん誰か持ってる」


歩美は言ったが、自信はなかった。


捜索開始である。


まず華子の部屋。


ない。


純子の部屋。


ない。


優子の部屋。


ない。


その頃。


短大から帰ってきた斉藤涼子が不思議そうに尋ねた。


「何してるの?」


「回覧板が消えた」


「そんな大事件みたいに」


さらに東田恵子と菅原初美も帰宅。


事情を聞いて探すのを手伝う。


岡つむぎまで動員された。


「回覧板ってそんなに大事なの?」


「大事です」


りんが即答した。


夕方。


みんなが少し諦めかけた頃。


談話室のドアが開いた。


「こんにちはー!」


弓木ちかだった。


「どうしたの?」


歩美が聞く。


「これ誰の?」


ちかが差し出したのは――


回覧板だった。


「それ!」


全員が立ち上がる。


「昨日ソファの隙間に落ちてたよ」


ちかは悪びれもなく言った。


どうやら優子が読んだあと、ソファの横に置き、そのまま隙間へ落ちてしまったらしい。


誰も気付かなかったのである。


「見つかってよかった……」


りんは心から安心した様子だった。


「ちかちゃんありがとう」


「えへへ」


ちかは得意げだ。


その後、回覧板は無事に全員へ回された。


涼子は夏祭りの日程を確認し、


あけみはフリーマーケットのお知らせを見つけ、


恵子と初美は地域清掃の日を確認する。


つむぎは最後まで読んで、


「意外といろいろ書いてあるんだね」


と感心していた。


夜。


回覧板を抱えたりんが帰ろうとすると、


歩美が言った。


「次はなくしません」


「前も聞いた気がする」


華子が冷静にツッコむ。


談話室に笑い声が響いた。


こうして明高荘の小さな回覧板騒動は、ちかの大手柄によって無事解決したのだった。



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