卒業式前日・最後の明高荘の夜の回
3月。
春の気配が少しずつ感じられる頃。
明高荘では、
いつもと少し違う空気が流れていた。
明日は、
卒業式。
純子と優子にとって、
高校生活最後の日が近づいていた。
夕方。
談話室。
いつもの場所に、
みんなが集まっている。
歩美。
華子。
あかり。
奈緒。
あけみ。
涼子。
初美。
恵子。
つむぎ。
そして弓木家。
さやか。
りん。
しずく。
ちか。
今日は、
いつもの雑談とは少し違った。
「明日で卒業なんだね」
華子が言う。
優子は笑う。
「まだ実感ないな」
純子も談話室を見回す。
ここで、
何度も話をした。
文化祭の作戦会議。
家庭菜園の収穫祭。
クリスマス会。
フランス研修旅行の思い出話。
受験勉強の休憩時間。
全部、
この場所に残っている。
歩美が言う。
「純子先輩と優子先輩がいなくなると、寂しくなります」
「でも」
優子が続ける。
「明高荘は変わらないよ」
「次は歩美たちが、この場所を作っていくんだから」
その言葉に、
歩美は頷く。
夜。
さやかが小さな料理を用意する。
「卒業前夜のお祝い」
大きなパーティーではない。
でも、
明高荘らしい温かい時間。
テーブルには、
みんなの好きな料理。
そして、
最後には写真撮影。
「せっかくだから全員で撮ろう」
あけみが言う。
カメラの前。
純子。
優子。
歩美。
華子。
みんなが並ぶ。
シャッター音。
一枚の写真。
そこには、
明高荘の今が残った。
夜遅く。
純子と優子は談話室を片付ける。
「この景色を見るのも最後かな」
優子が窓を見る。
庭には、
冬を越えた家庭菜園。
まだ小さな変化しかない。
でも、
春には新しい芽が出る。
「春になったら、また野菜植えるんだよね」
純子が笑う。
「さやかちゃんが張り切ってるからね」
二人は笑う。
明高荘で過ごした時間。
楽しかった日。
大変だった日。
全部が大切な思い出。
部屋に戻る前。
純子が言う。
「明高荘に来てよかった」
優子も頷く。
「うん。本当に」
静かな夜。
明高荘には、
明日の卒業式を待つ時間が流れていた。
春は別れの季節。
でも、
新しい始まりの季節でもある。




