島居優子エピソード『もう一人の3年生』
島居優子。
明石高校美術科3年生。
明高荘では、
山下純子と並ぶ3年生のお姉さん的存在だった。
純子が落ち着いてみんなを支えるタイプなら、
優子は明るく声をかけて、
場の雰囲気を和ませるタイプだった。
明高荘に新しい住人が増えた時。
緊張していた後輩たちに、
最初に話しかけるのは優子だった。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
「明高荘はみんなで暮らす場所だから」
その一言で、
新しい生活に慣れていく人も多かった。
高校1年生の歩美や華子にとって、
優子は頼れる先輩だった。
作品制作で悩んでいる時。
「どうしても上手く描けないです」
歩美が言う。
優子はスケッチを見る。
「上手く描こうとしすぎなくてもいいんじゃない?」
「自分が楽しいと思ったところを大事にしてみたら?」
その言葉は、
歩美の心に残った。
文化祭。
優子は準備でも大活躍。
展示の手伝い。
後輩のフォロー。
忙しい時でも笑顔を忘れなかった。
「大変だけど、みんなで作るから楽しいんだよ」
それが優子の考え方だった。
2年目の文化祭では、
歩美や華子が中心になる場面も増えた。
優子は少し離れたところから見守る。
「もう立派になったね」
純子と一緒に、
後輩たちの成長を喜んでいた。
そして高校3年生。
受験の一年。
いつも明るい優子も、
不安になることはあった。
大学受験。
進路相談。
卒業への準備。
でも、
明高荘ではいつもの優子だった。
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながら、
自分自身も頑張っていた。
卒業制作。
優子の作品には、
未来へ進む気持ちが込められていた。
「これから新しい場所に行っても、前を向いていたい」
そんな思いが表現されていた。
合格発表の日。
合格を知った瞬間。
明高荘のみんなが喜んだ。
「おめでとう!」
優子は笑顔で答える。
「ありがとう」
でも、
少しだけ寂しさもあった。
明高荘で過ごす時間が、
残り少なくなっていたから。
卒業前。
談話室。
優子は後輩たちを見る。
「明高荘での時間、大切にしてね」
「毎日の普通の時間が、あとから大事な思い出になるから」
歩美は頷く。
純子とは違う形で、
優子もみんなを支えていた。
優しく背中を押す純子。
明るく前を向かせる優子。
二人がいたから、
明高荘の雰囲気は温かかった。
春。
優子は新しい道へ進む。
でも、
明高荘の談話室には、
優子の笑い声が今も残っている。
島居優子。
明高荘を明るく照らした、
もう一人の大切な3年生だった。




