↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/86

レイヴァンのことが気になって仕方ありません!


 「僕と一曲、踊ってくれない!?」


 「………はい?」


 事件が起きたのはパーティーの中頃だった。


 私に向かって手がさしのべられている。まだデビューしたてなのか、ジャケットは皺ができてズボンのベルトは穴からピンが外れ、、ネクタイは首の肉に食い込んでいる。大変ふくよかな体型だ。その手はまだ小さく、背も私と同じくらい。明らかにこういったものに慣れておらず、断られても相手も自分も恥ずかしくないように小声で申し込むというマナーが守れていない。その後ろには彼の母親であろう女性がにこにこしながらこちらを眺めていた。

 唇を引き結び、嫌だという顔をするのを耐える。

 

 つまりあれだ。


 ほら!誰かに声かけてきなさいな!

 

 えー。やだ僕お母様といる!


 そんなこと言わずに!ほら、あそこのご令嬢なんか声かけやすいんじゃない?


 というやつだ。


 しまった………………。と頭を抱えたい気分。

 声をかけられないように地味な格好をしてきたことが裏目に出るとは………!


 あの女性もよくこんな地味女を息子の相手に選んだもんだ と半目で見る。すると、 緊張しているの?大丈夫よ、うちの子は優しいわ! とでもいうかのように頷かれる。

 とは言え踊った暁には挨拶が待っているため、受けるわけにはいかない。

 こういう時はパートナーの男性が断りをいれるものだけど、クリスはまだランベル令嬢に離してもらえていない。


 「ごめんなさい、体調が悪いので休んでいるんです。」


 「え?でも、パーティーに来た時からずっとそこにいるだろ?」


 空気がよめない!!


 これは逃げるしかなさそうだ、と思い、顔に笑顔を張り付けながら後ろへ下がる。

 彼は、肉に埋もれた細すぎるその目をこちらに向けながらもきょとんとして動かない。


 彼が鈍くてよかった………………!


 そう思いながら振り向きカーテンの奥へと走った。



 


 カーテンによって会場と休憩所のようなここは遮られており、もう既に何人か休んでいるんでる方々がいた。


 あの男の子が追いかけてこないことを確認して、ほっと息をついた。

 パーティーは、ようやく半分が終わったところでもう帰るペアも多く、賑わいが減ってきた。ここからはいわゆる大人の時間だ。

 子供たちの姿はもうなく、もう成人(この国での成人は16歳)した男女が多く踊っている。

 私のような子供は浮いてしまうから、ちょうどいいのかもしれない。

 カーテンのすぐ裏側の椅子にすわって、隙間からオリビアを見守る。

 アゼンタイン家の公子様のパートナーであるオリビアは、クララック様が帰れない限り道連れである。公爵家はどのパーティーでも中心になるから、まだまだ帰ることはできないだろう。

 オリビアはまだ元気そうでほっとした。


 それはそうと、皇室主催であるにもかかわらず、皇太子様の姿が見えない。こちらにとっては好都合だけど、この期に娘を紹介しようとしていた何人かのおじさまたちが探し回っている。

 陛下と皇后様は始まった時から上座にすわったり踊ったりを繰り返しているが、皇太子様は一向に姿を表さない。

 まだこの世界に来てから皇太子様を見たことはないけど、小説の描写によると、皇太子様は黒髪碧眼を持ってそれはそれは美形なのだという。黒髪はこの国では皇族しか持ってはいない。その珍しさはさることながら、目の色まで珍しいのだとか。ただの碧眼ではなく、深い深い海のような暗い色で、その目を見つめたものは海に吸い込まれたような気分になるのだとか。


 「絶対大袈裟………………。」


 「なにが?」


 突然背後からかけられた声にびくぅっとして振り返る。


 さっきの男の子だった。


 考えことをするあまり気づかなかった………!


 「えっ、えっと………」


 「さっき逃げてったのなんで?」


 いや察してくれ。


 そんなことを言えるわけもなく、あはは、とから笑いをする。


 「実はこういった会場が初めてで緊張して体調が悪いのです。ですからなかなか治らず、貴方とダンスは無理だと………」


 「うそだろ。」


 へ。


 「僕に恥をかかせやがって!僕はトラッチ伯爵家の長男だぞ!」


 トラッ………? 


 いきなり叫んだ男の子から身をそらせつつ記憶を引っ張り出す。


 トラッチって確か、私に求婚してきた内のひとつの………。

 あの変な名前の………!?


 長男ってことは、お相手はこの子か。と考えると顔がひきつる。


 「ほら行くぞ!特別に今なら許してやるから!」


 がっとふっくらした手が私の腕をつかむ。なにかぬるっとした感触がして、ひっと軽く声をあげてしまう。

 なにか脂ものでも手掴みで食べて、手を洗っていないのだろうか。

 掴もうとしてうまく掴めないであろう私の腕を掴み直している。

 この様子だと一回も踊っていないだろうに、汗もびっしょり。

 

 「うぇぇ………。」


 「ほらこい!」


 いきなり引っ張り上げられバランスを崩す。


 はっとして体を震わせる。

 こ、このままだと、あの脂と汗まみれの体にダイブ………………!!




  いやぁぁぁぁ!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。